「っ、その顔! 昨日の動画で見た、プリズムのMVの最後の表情にそっくりです! コメント欄も見たんですけど、ファンの子たちも皆カッコいいって書いてましたよね! あのダークな雰囲気の衣装とミステリアスなセットにすごく合ってて、わたしもドキッとしちゃって……!うわぁ、神ファンサありがとうございます!」
興奮のままにお礼を伝えれば、元宮さんは目を丸くして、うつむいてしまった。
かと思ったら、肩をふるわせて笑い始める。
「さ、紗南ちゃんって……本当に面白いよね」
「え? ……わたし、そんなに面白いこと言いましたか?」
どうしてこんなに笑われているのか、全然分からないんだけど……?
元宮さんはしばらくして落ち着くと、ズボンのポケットから自分のスマホを取り出した。
「はぁ、ごめんね。とりあえず時間もないし、連絡先を交換しちゃおうか。別に紗南ちゃんが悪用するだなんて思ってないし、この学園の生徒で交換してる人だってたくさいいるからね。紗南ちゃんが嫌じゃなければ、だけど」
「い、嫌だなんて、そんなことあるわけないです!」
そのまま流れで、元宮さんと連絡先を交換してしまった。
――紗南は、推しの連絡先をゲットしてしまった。レベルが10上がった。
無事に連絡先を交換して満足そうに笑っている元宮さんは、
「あ。それから、俺のことは潤でいいからね」
って、名前で呼んでいいとまで言ってくれた。



