ちなみに悠月は、めんどくさいからって、学校指定のシャツと青のネクタイをつけているだけだ。
それなのに、それだけでもう、すっごく似合ってるんだよね。

悠月は切れ長の瞳で、鼻もつんっと高くて、本当に綺麗な顔立ちをしているんだ。
艶のある黒い髪の毛だって、いつもサラサラだし、背もモデルみたいにスラッと高いし。

悠月は保育園に通っていた時から女の子たちにモテていたんだけど、本人はそういったことに一切興味がないみたい。
ちょっともったいないって思っちゃうけど、わたしも恋愛のことは全然分からないから、そこは幼なじみで、似た者同士ってところなのかな。


「すっげーでかい校舎だな」

「本当だね。……あれ? あっちの方、何だかすっごく盛り上がってない?」


校門を通りぬければ、校舎を正面にして左手の方に、生徒たちが集まっているみたい。
目をこらしてみれば、特設で作られたステージに、三人の男の子たちが立っているのが分かった。
――そこに、まぶしい金色を見つける。


「朝からゲリラライブに集まってくれてありがとうな! そんじゃあ時間もないことやし、ラストの一曲、いってみよーか!」


彼の合図で、曲が流れる、アップテンポでノリのいい音楽。
マイクを通して伝わってくるその歌声は、甘くて、ちょっぴりハスキーで、わたしの胸の奥まで響いてくる。


「……あの人だ」


私がずっと会いたいと焦がれていた“推し”は、ステージの上で、きらきらと輝いていた。