「紗南がヘマしないように見ててくれって、おじさんに頼まれたんだよ」

「え、お父さんに?」


お父さん、そんなこと一言も言ってなかったのに……。
いつの間にそんな話をしていたんだろう。
というか悠月は、それだけで転校することにしちゃってよかったのかな?


「鶯花咲の“セイレーンの呪い”は、かなり厄介なものらしい。紗南は強いけど……一人じゃ不安だろ。だから、おれもついていくことに決めたんだ。それに、陰陽師としての腕を上げるためには打ってつけだと思ったからな。あと、通学も電車で三駅で近いし」


悠月は転校することに決めた理由を話してくれる。
どうやら、お父さんに頼まれて、嫌々転校を決めたってわけではなさそうだ。


「なーんだ、そうだったんだ。でも……へへ、ちょっと安心したかも」

「安心?」

「うん。だってこれまで、悠月とはずっと一緒だったでしょ? せっかく同じ中学だったのに、これからは別々になっちゃうのかぁって、少し不安だったし、寂しいなって思ってたんだ。だからまた一緒の学校に通えて、すごく嬉しいよ」


素直な気持ちを伝えたら、真顔でわたしを見つめていた悠月に、髪の毛をくしゃりとなでられる。