春うららかな四月下旬。今日は鶯花咲学園に転校する日だ。
元気よく家を出たわたしは、るんるん気分で学園までの道のりを歩いているわけなんだけど……。
「ねぇ、悠月」
「何だよ」
「一つ、聞いてもいい?」
「あぁ」
「あのね……どうして悠月も、鶯花咲学園の制服を着てるわけ?」
わたしの隣を、平然とした顔で歩いているのは、鳴宮悠月。
生まれた時からお隣の家に住んでいる、いわゆる、幼なじみってやつだ。
実は鳴宮家も、ウチと同じ陰陽師の末裔なんだよね。
だから悠月とは、小さいころから一緒に修行や特訓をしていたんだ。
家族ぐるみで仲がいいから、誕生日やクリスマスなんかの行事も一緒に過ごすことが多かったし、お互いに勝手に部屋を行き来したりもしている。
まぁ、中学校に上がってからは、思春期真っ盛りってこともあるのか、悠月は少しだけそっけなくなっちゃって。
だから、校内で話すことは減っちゃったんだよね。
それでも、わたしにとっては弟みたいな存在でもある、大切な幼なじみなんだ。
それを言ったら、
「何でおれが紗南の弟なんだよ」
って、悠月は不満そうにするんだろうけどね。
そんな悠月も同じ制服を着ているってことは、もしかして……。



