「おれのこと、ちゃんと見ててくれた?」

「み、見てた、けど……」

「……まぁ、おれはずっと、紗南しか見てないけど」


優しい顔で笑った悠月は、わたしの頭をそっと撫でてくる。

――もう、意味がわからないよ……! 皆、どうしちゃったわけ!?

照れて火照った顔のまま、ぽかんと口を半開きにして放心状態のわたしに、はじめに声をかけてきたのは星穏さんだった。


「紗南ちゃん、どうやった? 今ので元気出た?」

「……え? どういうことですか?」

「ん? いやぁ、有栖がな、紗南ちゃんはゲームの推しの子みたいに、甘い言葉を伝えればめっちゃ元気になってもらえる言うたから。マネージャーになってくれた紗南ちゃんに、ありがとうの意味も込めて皆で伝えよういう話になったんよ!」


星穏さんは眩しい笑顔を浮かべて、真相を教えてくれた。
突然の甘い言葉の数々の意味は、そういうことだったのね……。


「っ、もう! わたしで遊ばないでください‼」


真っ赤な顔で怒れば、ただの善意で伝えてくれたのだろう星穏さんはきょとんとした顔をしているし、潤さんと有栖さんは、おかしそうに笑い始める。
悠月はどこか呆れた顔をしているけど、わたしを見る目はいつも通り、すごく優しい。

そして四人は、声を揃えてこう言ったんだ。


「「まぁ、これからもよろしく(ね)。おれ(俺)らのマネージャー(さん)」」


――セイレーンの呪いを再び封印するためにも、アイドルのマネージャー兼、護衛をする日々は、まだ始まったばかりです。