「これから、放流会があるんだよ」
「放流会?なにそれ?」
「ウミガメだけど、おぼえてないか?」
そう言われても、記憶にない。
小学生になる前、私は島を出たから。
今はだいじょうぶだけど、幼かったころの私は、カメや大きな魚が怖くて避けてたのかも……
水平線に太陽は近づいてるけど、夕方というには、まだ早い時間帯だと思う。
賢斗くんの体内時計では、今が夕方なんだろう。
ウミガメの放流会があることを言わずに、驚かせようとしてくれてたのかもね。
真央はたぶん、知ってたけど単純に忘れていたのかもしれない。
倉橋ダイビングショップと道路を挟んで、目前に白いサンゴダストの砂浜が広がっている。
すでに海水浴客の姿は無く、たくさんの人たちがあつまっていた。
立ち尽くす私の荷物を真央が取り上げ、冷蔵庫へ食品を素早く入れる。
それが終わると、妹が私の手を取って海辺へ走り出した。
賢斗くんも、私たちの後を追う。



