休み明け、朝会があるというのもあって朝から少し忙しい。
生徒会長だから、それなりに毎日忙しいけどね。
「おはようございます会長」
確認のために体育館のステージ裏に行くと、副会長の卯月琉偉(うづきるい)くんがいた。
琉偉くんとは幼馴染で、小さい頃から仲がいいんだ。
ちなみに、彼は有名会社の社長の息子だよ。
「敬語はいいって言ってるのに…」
「そうだった。ま、癖みたいなもんだし気にしない、気にしない!」
僕は呆れながら笑う。
仲はいいけれど、やっぱり敬語で話す場面は多くて。
それが少し悲しかったり。
って、僕は何を思ってるんだ。
「準備ははしておいたから、大丈夫だよ。会長の言葉頑張ってね」
「いつもそればっかり」
過保護…と言うのだろうか。
朝会がある日には、いつもこう言う。
「あー、そうだっけ」
こうやって忘れたフリをするのも、いつも通りだ。
ーーーーー
「これで朝会を終わりにします。生徒達は次の授業に間に合うように、教室に戻ってください」
朝会が終わり、僕達は後片付けをする。
授業は朝会終了の20分後に始まるから、生徒会メンバーも少しゆっくりできるんだ。
先生方もよく考えてくれてる。
僕は周りを見回して片付け忘れがないか確認し、教室に戻ろうと足を進める。
けれど、彼の声によってその足は止まった。
「会長!」
勢いよく振り返ったところに、月海くんが立っていたのだ。
「月海くん…?」
「やっほー。あれ?俺名前言ったっけ?」
「…店員さんが呼んでいたから」
僕はとっさに嘘をついてしまった。
なんだか、彼に興味があって名前を知ってるなんて思われたら嫌だから。
「そっか。あ、今から教室行くとこ?途中まで、一緒に行こ〜」
そう軽く言われて、僕は思わずうなずいてしまう。
ハッとして取り消そうと思ったけど、月海くんが嬉しそうに笑ったのを見て言葉を飲み込んだ。
そして、彼の隣を歩きだす。
「そういえばさー、会長この前の会食で主催者と話してたよな。知り合い?」
「え…?気がついていたの?」
まさか僕に気がついていたなんて思ってなかったから、びっくり。
「そりゃ気づくでしょー」
「そっか…。えっと、正確には僕の両親と関わりがあるんだ。だから…。まあ、知り合いっていうのかな?」
月海くんは一瞬固まってから、真剣な顔で聞いてきた。
「会長の家って結構有名だよな?あの主催者と別に親しい感じじゃなくね?でも、会長は親しげだったよな。なんで?」
彼がどういう意図で聞いているのかは分からないけど、僕にとってその質問は苦痛でしかない。
やっぱり彼は僕の噂を知らないんだ。
だったら、彼は知らないでいてほしい。
そう思ってしまった。
「さあ?どうしてだろうね。お友達にでも聞いてみたら?きっと知ってるよ」
僕はにっこりと笑って、彼を突き放した。
君は僕に関わっていい人間じゃないから。
「君は特進クラスだからこっちじゃないでしょ?またね」
そう言って、背を向けて歩き出した。
彼と関わったらいけない気がする。
そう、僕の心が言っている気がしたから。
「…なんだよそれ」
だから、ごめんね。