顎に添えられていた手がいつの間にか怜花の髪を撫で、首の後ろに回っていた。体のどこに触れられても、かつて男に感じていた嫌悪感などはなくて、ただただ温かい気持ちがじわりと広がって、心を満たす。
何度か唇が離れても、それ以上深いものに変わることはなく、学生の頃のようなキスが続いた。
二人の間にゆっくりと距離ができると、視線が絡み合う。大人なのに大人じゃないみたいなペースのキスに、妙に照れてしまう。それ以上を今求めているわけではないのに。
「…苦しい?」
「…大丈夫。…もっと、欲をぶつけられても、…大丈夫、ですよ?」
きっとたくさん我慢させている。だってずっと、目の前のこの人は自分を優先していてくれたのだから。
「…かっこ悪いこと言うけど、そんなのぶつけられないよ。…普通に怖い。」
「怖い?私が怒りそう…だから?」
「…そうじゃなくて。…大事すぎて、壊したくなくて、無理。今、俺の精一杯で近付いてる。」
目を閉じた律の額が、怜花の前髪にそっと重なる。ふぅと吐かれた息に、律の張りつめていた気持ちと緊張を知る。ずっと自分のことを立たせておくことに必死だったけれど、本当は律だって自分のことだけを考えていてもよかったはずだ。怜花が崩れてしまったから、律が崩れないように頑張ってくれていた。一番苦しい山を越えた今、落ち着きを取り戻しつつある頭で目を開けば、もっとよく律が見えた。
「…全然精一杯な感じ、しない…。手の優しさが、慣れてるもん。」
「…それは、怜花に触れて慣れたんだよ。多少はってくらいだけど。…彼氏のフリして手を繋いだり、抱きしめたり。そういうことを通して出来上がった手だから。」
律の手に、怜花が手を伸ばす。両手で包み込むように触れると、わずかな震えが伝わった。
「…優しい手だね。安心できる。…無条件に。」
「ほんと?…嬉しい。いつでも飛び込んできたくなった?」
「いつでも飛び込んでいいの?」
「うん。」
「…じゃあ、今がいいな。」
生まれて初めて、怜花の方から律に体重を預けた。胸元のシャツを軽く掴んで、目を閉じる。手の震えに気付いてしまったら、その震えが収まるように何かしたいと思ってしまった。律の体温と香りに安心して、本当は何か律のためになることがしたかったのに、結局自分がまた受け取ってるだけだと気付いて苦笑する。…自分はあまりにも甘えすぎている、と。
何度か唇が離れても、それ以上深いものに変わることはなく、学生の頃のようなキスが続いた。
二人の間にゆっくりと距離ができると、視線が絡み合う。大人なのに大人じゃないみたいなペースのキスに、妙に照れてしまう。それ以上を今求めているわけではないのに。
「…苦しい?」
「…大丈夫。…もっと、欲をぶつけられても、…大丈夫、ですよ?」
きっとたくさん我慢させている。だってずっと、目の前のこの人は自分を優先していてくれたのだから。
「…かっこ悪いこと言うけど、そんなのぶつけられないよ。…普通に怖い。」
「怖い?私が怒りそう…だから?」
「…そうじゃなくて。…大事すぎて、壊したくなくて、無理。今、俺の精一杯で近付いてる。」
目を閉じた律の額が、怜花の前髪にそっと重なる。ふぅと吐かれた息に、律の張りつめていた気持ちと緊張を知る。ずっと自分のことを立たせておくことに必死だったけれど、本当は律だって自分のことだけを考えていてもよかったはずだ。怜花が崩れてしまったから、律が崩れないように頑張ってくれていた。一番苦しい山を越えた今、落ち着きを取り戻しつつある頭で目を開けば、もっとよく律が見えた。
「…全然精一杯な感じ、しない…。手の優しさが、慣れてるもん。」
「…それは、怜花に触れて慣れたんだよ。多少はってくらいだけど。…彼氏のフリして手を繋いだり、抱きしめたり。そういうことを通して出来上がった手だから。」
律の手に、怜花が手を伸ばす。両手で包み込むように触れると、わずかな震えが伝わった。
「…優しい手だね。安心できる。…無条件に。」
「ほんと?…嬉しい。いつでも飛び込んできたくなった?」
「いつでも飛び込んでいいの?」
「うん。」
「…じゃあ、今がいいな。」
生まれて初めて、怜花の方から律に体重を預けた。胸元のシャツを軽く掴んで、目を閉じる。手の震えに気付いてしまったら、その震えが収まるように何かしたいと思ってしまった。律の体温と香りに安心して、本当は何か律のためになることがしたかったのに、結局自分がまた受け取ってるだけだと気付いて苦笑する。…自分はあまりにも甘えすぎている、と。



