夜を繋いで君と行く

「…嫌じゃない。」

 何も考えてなかったわけではない。でも、そのまっすぐな目に吸い寄せられるように落ちた言葉だった。
 怜花の両頬に添えられた律の手がそのままゆっくりと怜花を引き寄せる。壊れ物に触れるかのような繊細な手つきと、柔らかく重なった唇に、怜花は素直に驚いた。…こんなに優しいキスがあったのか、と。
 目を開けると、そっと視線が交じり合う。映画に出てくる恋人のような甘い空気に慣れていなくて、怜花の目の方が先に逃げてしまった。

「…めちゃくちゃ照れるじゃん。こっち見てよ。」
「…む、無理…。だ、だってこんな…。」
「こんな…?」
「…優しすぎる、キスも、手も。」

 律の手が、怜花の頬を撫でる。その手に怜花は自分の手を重ねた。

「当たり前でしょ。だって好きな子が自分を見てくれて、触れることも許してくれて、まだまだ触れてていい。…優しくしたいでしょ、そんなの。優しく触れる以外の選択肢ってあるの?」

 怜花はきゅっと律のシャツの裾を掴んだ。

「ん?」
「…や、やっぱり不安になってきた…本当に私でいいのかなって、改めて。ほんとに、私で大丈夫かな…?里依みたいに女の子らしい可愛さは提供できないし、意地も張ると思うし…。」
「充分可愛いでしょ。まず大体ね、そんなこと言ってることが可愛いからね。」

 そう言って、律は少し強めに怜花を抱きしめた。

「…でも、服じゃなくて俺に手を伸ばしてよ。いつでも触れて。大歓迎だよ。俺も外では我慢するけど、家の中なら我慢しない。」
「…頑張りたい…けど、ぎこちない、かも。」
「いいよ。初心者じゃん、俺ら。こういう…なんだろな、普通の恋人みたいなやつ。初めてちゃんと人を好きになって向き合って、恋人をしてる。だから全部ゆっくりやろう?…まずはもうちょっとキスしてもいい?」
「…許可制なの?」
「最初だから聞いてる。でも、段々聞かなくてもし始めると思うけど。」
「…そっか。…じゃあ、初心者なのでお手柔らかにお願いします。」
「…俺も初心者だって。」

 怜花の片顎に添えられた手がさっきよりも強く、引き寄せる。ただ唇を触れ合わせるだけなのに胸が苦しくて、でもどこか温かさがあった。