「怜花ちゃんが、男にそういう目で見られることが嫌だって知ってる。…そういう目で見ないって約束の代わりに一緒にいてもらったのに、それを裏切ってごめん。怜花ちゃんが当たり前みたいに返してくれる優しさに、甘えてごめん。…全部、頑張ってやってくれてたことも知ってたのに、踏み込む勇気がもてなかった。…嫌われて終わりにしたくなかった、どうしても。だから決定的な言葉を避けて、でも傍に居れるような位置を探して。…怜花ちゃんは自分のことをずっと、狡いって言ってたけど、…狡かったのは最初から俺だよ。一人で何とかできるって言ってたのに、押し付けるように彼氏のポジションを獲得して、俺がやることに引け目を感じて何かを返さなきゃって必死になってくれなくてよかったのに、必死になって色々してくれるのが嬉しくて、楽しくて、…怜花ちゃんは近付かれることが怖いんだってわかってるのに、その線を踏み越えてこっちを向いてほしくなった。…ね、全部俺のわがままで、怜花ちゃんに悪かったところは一つもなくて、謝らなきゃいけないところもない。…ごめん、本当に。嫌なことをしてる、ずっと。」
怜花は首を横に振った。頭を振るのは、ガンガンして痛かったが、二階堂の言っていることをどうしても否定しなくてはいけない気持ちになって、怜花はまっすぐ二階堂を見つめた。幸い、涙腺は少し頑張ってくれているようで涙は引っ込んでいた。
「…嫌なことは、…されてないんです、本当にずっと。ずっと、優しかった。その優しさが嬉しくて、でも…その優しさを受け取っていいのは、…私じゃない。私は何も返せない。何も持っていない。いつでも替えの利く、そこら辺の人です。大事にされたことがないから、大事にできません。だって、二階堂さんにしてもらったことが全部、嬉しかったのに…それは伝えられない。…大事です、嬉しいですって…言えないんです。」
伝えない気持ちはきっと、拾う力のない人にとってはないも同然で、拾う力がある二階堂ですら拾いにくいものだ。何も伝えていない怜花が何を嫌がって、何が嬉しかったかを二階堂が理解できていないとしてもそれは全て、怜花のせいなのだ。
「…嫌じゃないの、俺のこと。」
「…嫌じゃ、ない、です。…嫌いだったら、悩まないの。」
嫌いだったら、会えないことも声を聴けないことも苦しくなかっただろう。食べれなくなって眠れなくなって、目を瞑っても脳裏に浮かぶのが戻れない日々になることだってない。
怜花は首を横に振った。頭を振るのは、ガンガンして痛かったが、二階堂の言っていることをどうしても否定しなくてはいけない気持ちになって、怜花はまっすぐ二階堂を見つめた。幸い、涙腺は少し頑張ってくれているようで涙は引っ込んでいた。
「…嫌なことは、…されてないんです、本当にずっと。ずっと、優しかった。その優しさが嬉しくて、でも…その優しさを受け取っていいのは、…私じゃない。私は何も返せない。何も持っていない。いつでも替えの利く、そこら辺の人です。大事にされたことがないから、大事にできません。だって、二階堂さんにしてもらったことが全部、嬉しかったのに…それは伝えられない。…大事です、嬉しいですって…言えないんです。」
伝えない気持ちはきっと、拾う力のない人にとってはないも同然で、拾う力がある二階堂ですら拾いにくいものだ。何も伝えていない怜花が何を嫌がって、何が嬉しかったかを二階堂が理解できていないとしてもそれは全て、怜花のせいなのだ。
「…嫌じゃないの、俺のこと。」
「…嫌じゃ、ない、です。…嫌いだったら、悩まないの。」
嫌いだったら、会えないことも声を聴けないことも苦しくなかっただろう。食べれなくなって眠れなくなって、目を瞑っても脳裏に浮かぶのが戻れない日々になることだってない。



