夜を繋いで君と行く

* * *

 朝の光に反応して、仕事はないのに仕事通りの時間に起きてしまった。朝に強い方であるため、目が覚めてしまってまどろむということができない。かといってあまりもぞもぞと動いては二階堂を起こしてしまうだろうしと思いながら二階堂の方を振り返った。その寝顔が目に入ると、脳は嫌でも昨日の自分と、二階堂の言葉を思い出していた。適度に空いたままの距離と、少し気の抜けた幼い寝顔。わずかに伸ばされた腕は、もしかしたら自分の髪くらいにはふれていたのかもしれない。そんな余韻の残る空気に、本当に何もなかったのだということがわかる。

「…こういう人も…いるんだ…。」

 率直な感想だった。つまり昨日から、もしかしたらその前からずっとこの人は本当に怜花に嘘はついていなくて、何度も言っていた通りただ一緒に過ごしたかっただけなのかもしれない。知り合いと呼ぶには内側を少し見せていて、友達と呼ぶには何か足りない。恋人と呼ぶには何もかもが足りない二人の関係に、きっと今名前はない。
 ベッドの上で膝を抱えて体育座りをする。なぜか無意識にこうやって座ってしまう。膝を抱えていると、なんだか落ち着く。
 朝の光が差し込むカーテンをぼんやりと見つめて、音をなるべく立てないように息を吐いた。誰かを起こしてはいけない、なんて気を遣って起きている自分がなんだかおかしくて笑いたいような気持ちにもなるし、昨日かけた迷惑を思うと笑えないな、とも思う。

「ん…。」

 掠れたような声と共に寝返りを打ち、怜花が寝ていたところに触れた二階堂の手が、その場所の冷たさに反応してピクリと動き、その瞼はゆっくりと開いた。

「…いた、ちゃんと。」
「おはようございます。…いますよ、ちゃんと。」

 怜花の髪に、二階堂の指が触れた。苦手だったはずの男の手。それなのに、二階堂の手は苦手ではもうなくなっている。

「…ひやっとしたから、いなくなったかと…。」
「なんでですか。私の方が早く起きたってだけですよ。」
「…ごめん、つい髪触っちゃった。」
「いいですよ。好きなだけどうぞ。」
「そんなこと言っていいの?わしゃわしゃってやっちゃうよ?」
「…やれるものならどうぞ?」

 こう言ったらやらないだろう、この人は。そう思ってそう言ったのに、むくっと起き上がったその人は、まっすぐに怜花に向き合って両手を怜花のこめかみあたりに伸ばした。