夜を繋いで君と行く

「…ごめんなさい、こんなことまで…こんな、面倒なことを…。」
「…ううん。面倒じゃないよ。緩く手、回してるだけだから、怜花ちゃんが苦しくないような位置で寝て。」
「…あの、私…。」
「うん。」
「ここまでしていただいているのに、…眠れないかもしれなくて…。」
「それでもいいよ。俺、この位置にいても平気?」

 平気だった。怖いとも、突き飛ばしたいとも思わない。怜花は静かに頷いた。

「…良かった。ちょっと一か八かの賭けだったー…。怜花ちゃんが優しくて良かった。」
「…優しく…はないです。二階堂さんのことを、ずっと利用してるだけ…だから…。」
「そうしたいって俺が言ってるんだから、いいんだよ。」

 とんとんと軽く背中が叩かれると、不思議なほどに瞼が落ちていく。力の抜けた怜花の体を感じてもなお、二階堂は叩く手を止めることはしなかった。

* * *

 すぅ…と寝息が聞こえて、二階堂は少しだけ距離をとった。熱は充分に分け与えることができて、眠っている。朝が来たときにくっついていたら、驚かせてしまう。それは避けてあげたかった。
 怜花が寝返りを打ち、二階堂に背を向けた。これが今の自分たちの正しい距離だ。近付きすぎても遠すぎても少し変な感じがする。もう少し抱きしめていたかったような気もするし、怜花が安心して寝てくれているのならばそれでいいようにも思う。

 ふと、一人の部屋にいる怜花を想う。こういう夜は、もしかしたら何度もあったのかもしれない。全て可能性の話だが、そういう夜はどうしていたのだろう。一人でただ、体を守るように座って夜が明けるのを見つめていたのだろうか。だとすれば…

(今日は気付けて、よかった。)

 夜に溶けて消えてしまいそうなくらい心細そうな顔をして、それでもその横顔は凛として綺麗で。綺麗な彼女のこともかっこいいとは思うが、可愛い彼女でなるべくはいてほしい。そんなわがままをぶつけられはしないまま、密かに抱いている。だから抱きしめた。驚かせないように、こわばらせないようにと細心の注意を払って。