夜を繋いで君と行く

* * *

 不快感で目が覚めた。嫌な夢を見た。ハッとして自分の衣服を確認すると当然のように服はあり、目を閉じた時と何の変わりもないことに安堵する。

(…二階堂さんは約束を守る。…わかってるのに。最低すぎる、私。)

 嫌だと言ってもやめてもらえず、体に触れられた過去。まるで物みたいに扱われて、怜花の意思はそこには必要がなくて。体をまさぐられた時のあの手の感触が蘇って、頭の中が冴えわたってしまった。闇夜の中に意識を溶かしてしまいたかったのに、それはどうやら叶いそうにない。
 研ぎ澄まされた感覚に頼って背後に集中すると、微かに寝息のようなものが聞こえる気がした。二階堂は寝ていると確信して、怜花は起こさないように慎重に体を起こした。一番落ち着く姿勢である体育座りをして、ぼうっと窓の外に視線を向けた。明るさは欠片もなく、まだ夜中だとわかる。
 目を閉じると言われた言葉も、されたことも全て思い出してしまいそうで嫌だった。今日はカレーを作って笑って、一緒に観たライブの話も楽しくて、手の優しさに救われて目を閉じたはずだったのに。

 どのくらいそうしていたのだろうか。睡魔はもうどこにもいなくなってしまっていて、ただ嫌な方に思考を流さないことだけに集中していた怜花がふと、視線を感じて横を見ると、二階堂と目が合った。

「…眠れない?大丈夫?」

 ふわっとした柔らかい、自分を心配する声に一気に涙腺が壊される。今はだめだ、咄嗟にそれだけを思う。怜花は顔を隠すように俯いた。怜花の長い黒髪が揺れる。

「…ごめんなさい、起こして。」
「勝手に起きただけだから大丈夫。…近付いても、平気?」

 声の優しさに負けて、怜花は静かに頷いた。シーツが擦れる音がして、それがまた怜花の心をざわつかせる。

「手は、触ってもいい?」

 手は何度も繋いでいる。今更拒めはしないと思って頷いた。二階堂の手が、そのままポンと怜花の手の上に乗った。

「…冷えてる。」
「ごめんなさい。」
「なんで謝るの。悪いことしてるわけじゃないじゃん。まずはあっためよ。冷えると余計、眠れないと思うし。」

 指が絡むわけでもなく、ただ上に乗って熱をわけてくれるだけの大きな手。その熱を受け取った手がじわじわと温まり、指先に体温が戻ってきた。