夜を繋いで君と行く

「そんな違う?」
「全然違います。」
「即答じゃん。でもそっかぁ。じゃあ俺も緩んでるのかも。気を遣わないわけじゃないんだけどなぁ。この前も言ったけど心地いいんだよね、怜花ちゃん。俺に過度な期待をしないから。ほどよく話してくれて聞いてくれて、時々可愛い顔してて。そういうのに気付くとちょっと楽しい、みたいな。」
「…いつも可愛くなくてすみませんね!」
「そっちをとるの?心地いいじゃなくて?」
「…一緒にいて不快な思いをさせていないなら、それでいいです。…だって私は今、二階堂さんの優しさや気遣いを利用してる立場だから…。」

 他人の善意にかこつけて、曖昧なままずるずるとすがる、狡い人間。元々自分のことなんてこれっぽっちも好きではないけれど、自分は自分を死ぬまでやめられないのだから、これ以上傷ついたり痛みを感じたりすることがないようにして、ただ粛々と生を全うしたい。それだけのくせに、こうやって優しさが差し出されると突っぱねてしまうことができない。彼氏役をやると言ってくれたからそれに乗っかっているだけで、客観的に見て二階堂にメリットはない。手を出せない女を傍に置いておいたって、男にとっては何の意味もないのだから。

「利用されてるなんて思ってないよ。むしろ、つけこんでるのは俺でしょ。彼氏役やるよって言ったのも俺だし、その名前に乗じてこうやって一緒に過ごしたいって言ったのも俺。怜花ちゃんの方こそ俺に振り回されてんだから、文句の一つや二つ、言っていいんだよ。」
「…文句なんて、ないです。助かってるのも事実なので。」
「役に立ってる?」
「少なくとも、あの変な会社の人は話しかけてこなくなりました。」
「それは良かった。…でもちゃんと警戒はしてね。俺が会社に殴り込みに行くわけにはいかないから。」
「物騒なこと言うじゃないですか…。」

 二階堂は殴り込みに行くようなタイプにはまるで見えないが、想像したら少しだけ面白い。二階堂の立場を考えたら、そんなことになっては決してならないけれど。