夜を繋いで君と行く

「ちょっと解釈、歪んでません?」
「え~そうかなぁ。結構まっすぐに解釈したけど。でも今日はいいよ。こうやって俺のくだんないおしゃべりに付き合ってくれてるので充分。…外にいるときよりも、なんか柔らかい感じするし。」
「柔らかい、ですか?」

 柔らかいのは二階堂の声も同じだった。基本的に怜花と話すときは、声優として話すときよりも幾分か柔らかい。夜になって、ますます声は甘く柔らかくなっていた。

「うん。外にいるときって、なんか戦闘モードっていうか、できる人感っていうのかな。そういうのあって、それはそれで怜花ちゃんっぽいなと思うけど、俺と二人で、俺以外の他者の目がなければなんかちょっと違うっていうか、少し緩んでくれるみたいなところも今日はあって、そういうの、ちょっと特別感あっていいなって思ったから。」

 耳をくすぐる声がまた一段と甘く響いた。甘く聞こえてしまったのは、自分の心が揺れているからなのか、声優の技がなせることなのかはまだわからない。

「う~…声優って仕事、ずるくないですか?里依、こんなのに耐えてるの?すごすぎるんだけど…。」
「いきなり何?」
「…わざとやってます?」
「だから何?なんかした?怜花ちゃんの背中に向かってただ独り言投げてるだけの人みたいになってるんだけど、俺。」

 ちょっと拗ねたような言葉すら、甘く震える。

「声で揺さぶりかけられる…ので、このまま話し続けるなら普通に話してもらっていいですか?」
「普通に話してるじゃん?なんか違った?」
「…私が緩んでるみたいなこと言いましたけど、二階堂さんだって緩んでますからね、声が。仕事じゃそんなふわっと喋らないし、質問攻めにしないし、必要なことだけを的確に話すくせに、私にはすぐ『なんで?』ですし。」

 仕事で話す二階堂の声なら複数知っているのに、そのどれとも当てはまらない声がずっとそばにある。教官のように低い声でもなければ、アイドルを演じているときのようにキラキラ、はつらつとした声でもない。インタビューの時ともまた違う声だ。いい声で聞きとりやすい滑舌ということだけしか同じところはなくて、それ以外は全て違う声の響きにまた揺れてしまう。仕事ではない感情がそこに乗ってしまっているように感じられて。