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「いやあの、行ってもいいけど、それ、本当に私で大丈夫なの?」
「…ごめんね、無茶を言っているというのは、わかってます。」

 里依からの電話で何事かと思えば、三澄に誘われたバーベキューに一緒に来てほしいとのことだった。どうやら話を聞く限りでは三澄が自身の声優友達に誘われたようだ。三澄を含め男は4人で、怜花が会ったことのあるのは二階堂のみ。他2人の声優も顔と名前はわかるが、当然ながら会ったことは一度もない。それにそこにはその妻まで来るとのこと。里依は三澄の彼女として呼ばれていることは理解するが、怜花自身は声優と付き合っているわけではない。

「…だって、御堂さんと空野さんと会うこともそうだけど、その奥様までいらっしゃる…。三澄さんは無理しなくていいよって言ってくださってるけど、紹介し合いたい…のかな…とかも思うし。」
「そうだろうね、確実に。発案者は誰なの?」
「空野さんだって。」
「あぁー…なんかいつも明るい感じの人だよね。詳しくはないけど。」

 御堂も空野も、三澄や二階堂よりも少し早く売れたイメージのある有名声優だ。クールな御堂に対して空野はよく喋るし、快活なイメージだったような気がする。

「…紹介したいって思ってもらえたのは嬉しいんだけど、私で大丈夫かなという…。空野さんと御堂さんの奥様がそもそも仲が良いらしくて、その二人が私に会いたいって…。」
「え、なんで?」
「三澄さんとも仲が良いというか、家族ぐるみで仲良しみたい。二階堂さんも。だから、その…三澄さんに彼女ができたって話題になって、どんな子?会いたい!…ってなったって…聞いた。」
「なるほどね。それにしてもすごい繋がりだなぁ。」

 家族ぐるみで家族じゃない人と仲良くなった、仲良くした経験がない怜花は、ただただ驚く。そんな風に人と繋がり合って、繋がりが広がっていくなんて不思議だ。

「…三澄さんも普通に他の方と話すだろうし、そうなったときに、まず御堂さんや空野さんと会話するのは不可能…!となって、奥様と話すといってもそれもかなり不可能…!」
「…わかった。私は里依と三澄さんを邪魔せず、それなりに気まずくならないようにすればいいってわけね。」
「邪魔なんかじゃないよ!っていうか怜花の傍が一番落ち着けるし!」
「それはそれでどうなの?」

 くすっと笑うが、耳元で連呼される『ありがと~』に悪い気はしない。里依の頼みごとを断る選択肢は、怜花には最初からないのだから。