* * *
「珍しいですね、二階堂さんが打ち合わせ中に大欠伸とは。」
「あー……ごめん、つい他人がいないと思って気が緩んだ。」
「僕は他人ですが。」
「そうなんだけど、九重くんの前で多少の失礼を働いたって怒られないじゃん。」
「まぁ欠伸程度では別に何も思いませんが、ただ、慢性的な寝不足であれば何か手を打ちます。」
「慢性的っていうか、ここ1週間くらいかなぁ、……ってそんなになるか。」
律はスマホのカレンダーを見つめながら呟いた。怜花に手紙が来てから1週間と少しが経っていた。あの日ほど泣いてしまう日はなかったが、寝つきが悪い日、変な時間帯に目覚めてしまう日はままあった。どうしても呼吸が苦しくなって起きるようで、上がった息の音や、咄嗟にスウェットの裾を掴まれたりすることで律も怜花の目覚めに気付いて起きていた。それが嫌だとか辛いとか、そんな気持ちは少しもないけれど、ちゃんと眠ることができない怜花にはただ心配の気持ちだけが募った。食欲がない日もそれなりにあって、目に見えて痩せてしまってはいないが、それも時間の問題な気がした。
「土日は休みですし、月曜も夜のラジオまでは仕事がありませんから実質2.5日以上休みですが、そこで睡眠は回収できそうですか?」
「んー……わかんない。怜花が眠れてないから。」
「怜花さんが?」
九重の声にわかりやすく『意外』と『心配』の音が乗った。
「うん。起きちゃうんだよね、なんか。多分、一番良くない形で。」
「良くない形の中身は、わかってるんですか?」
「多分、『家族』」
「家族、ですか。」
「九重くんさぁ、怖いものってある?」
「怖いもの、ですか。……難しいですね。特に高所も閉所も平気ですし、ホラーなどにも恐怖を感じません。幽霊は見えませんから怖くはありませんし。あぁ、二階堂さんが長期で休むような病気や事故が発生したら怖いですね。スケジュール調整がどこまで可能か考えるだけでも頭が痛いですね。」
「そういう怖いかぁ。まぁでもそういう怖い思いはさせないように気をつけるね。車に突っ込まれたら終わるけど。」
「すみません、そういうことじゃないですよね。怜花さんの怖いものが『家族』と。」
小さめのミーティングルームに、九重の声が重く響いた。律はそのまま静かに頷いた。
「『家族』は嫌いだけど、怖いものじゃないんだよね、俺にとって。だからよくわかんなくて。でもだからと言って弱ってる怜花にはまだ聞けなくて、どうしよっかなぁって感じ。」
「珍しいですね、二階堂さんが打ち合わせ中に大欠伸とは。」
「あー……ごめん、つい他人がいないと思って気が緩んだ。」
「僕は他人ですが。」
「そうなんだけど、九重くんの前で多少の失礼を働いたって怒られないじゃん。」
「まぁ欠伸程度では別に何も思いませんが、ただ、慢性的な寝不足であれば何か手を打ちます。」
「慢性的っていうか、ここ1週間くらいかなぁ、……ってそんなになるか。」
律はスマホのカレンダーを見つめながら呟いた。怜花に手紙が来てから1週間と少しが経っていた。あの日ほど泣いてしまう日はなかったが、寝つきが悪い日、変な時間帯に目覚めてしまう日はままあった。どうしても呼吸が苦しくなって起きるようで、上がった息の音や、咄嗟にスウェットの裾を掴まれたりすることで律も怜花の目覚めに気付いて起きていた。それが嫌だとか辛いとか、そんな気持ちは少しもないけれど、ちゃんと眠ることができない怜花にはただ心配の気持ちだけが募った。食欲がない日もそれなりにあって、目に見えて痩せてしまってはいないが、それも時間の問題な気がした。
「土日は休みですし、月曜も夜のラジオまでは仕事がありませんから実質2.5日以上休みですが、そこで睡眠は回収できそうですか?」
「んー……わかんない。怜花が眠れてないから。」
「怜花さんが?」
九重の声にわかりやすく『意外』と『心配』の音が乗った。
「うん。起きちゃうんだよね、なんか。多分、一番良くない形で。」
「良くない形の中身は、わかってるんですか?」
「多分、『家族』」
「家族、ですか。」
「九重くんさぁ、怖いものってある?」
「怖いもの、ですか。……難しいですね。特に高所も閉所も平気ですし、ホラーなどにも恐怖を感じません。幽霊は見えませんから怖くはありませんし。あぁ、二階堂さんが長期で休むような病気や事故が発生したら怖いですね。スケジュール調整がどこまで可能か考えるだけでも頭が痛いですね。」
「そういう怖いかぁ。まぁでもそういう怖い思いはさせないように気をつけるね。車に突っ込まれたら終わるけど。」
「すみません、そういうことじゃないですよね。怜花さんの怖いものが『家族』と。」
小さめのミーティングルームに、九重の声が重く響いた。律はそのまま静かに頷いた。
「『家族』は嫌いだけど、怖いものじゃないんだよね、俺にとって。だからよくわかんなくて。でもだからと言って弱ってる怜花にはまだ聞けなくて、どうしよっかなぁって感じ。」



