夜を繋いで君と行く

* * *

 目が覚めると部屋はまだ明るくて、ただ頭はどこかすっきりしていた。少し見上げると律の寝顔がある。いつもの景色だ。いつの間にか怜花の『いつもの景色』になっていたものがそこには確かにあった。

「……眠れた、ちゃんと。……ありがとう。」

 『ごめんなさい』の代わりに、するりと落ちた『ありがとう』の言葉に怜花自身が驚いた。涙がなければ落ち着ける。そしてずっと温かいこの腕の中に包まれると、不安がそのまま残っていても『一人にはならない』ことだけはわかる。律は何度も、自分をこうやって温かい場所に引き上げてくれた。

(いつも『証明』されちゃうな。……絶対に手を出さないって言ってた最初の頃も、追いかけてくれた時も、一緒に長い時間を過ごすようになってからもずっと……律はずっと、一度も嘘をついてない。言ったことは全部本当になるって、律の言葉と行動が目覚めた時に『証明』される。)

 怜花の方から距離を詰めて、そっと抱きついた。

(……落ち着けば、ちゃんとできる。まだ、できる。忘れてもできなくなったわけでも、ない。)

 ふと、怜花を抱きしめる律の腕が強まった。

「ん、あの、律…?」

 ぎゅうっと強い腕のせいで少し苦しい。寝ぼけているのかあえてそうしているのかは表情が見えないからわからない。

「可愛すぎ~……ぎゅうってされたから起きたし。起こしてくれてありがと。こんな可愛いの気付かなかったらめちゃくちゃ損だったし。」
「律あの、苦し……。」
「思い知ってくださーい。こういうのされちゃうくらい可愛いことしたんですー。」
「り、律はちゃんと眠れたの?」
「ん。怜花もすぐ寝たよ。」

 律の腕の力が弱まった。律の手が怜花の頬に触れ、目元をすっとなぞった。

「ちょっと顔色良くなった。今3時ちょい前だからー……結構寝たねぇ。流石に二人とも疲れてたか。でもお昼寝ってあんまりしたことなくない?」
「律が具合悪かった次の日、ちょっとだけしたかな?」
「あぁ、あったね。お昼寝もなんか、休日の贅沢って感じして良いね。出かけない日で二人して丸っと休みの日にまたやろーね。」
「……うん。」

 怜花が頷くと、律がにっこり笑う。こういう笑顔は『声優』の律の時には見れない。舞台挨拶を見ても、律の出ているネット記事を読んでも、雑誌を見てもこういう律はいない。

「……特別。」
「ん?」
「特別な顔をたくさん、見せてもらってるなぁって改めて。甘やかしてもらってるし。……律がいなかったら、今日も眠れなかったね私は。夜が過ぎていくのをただただ膝を抱えて、じっと耐えてた。一人だったら。…だから、ありがとう。律がいてくれてよかった。律の声じゃなかったら、戻って来れなかった。」