夜を繋いで君と行く

* * *

 歯を磨いて、二人は寝室に戻ってきた。朝食を食べた後だというのにすぐベッドに戻ってきてしまうなんて自堕落にも程がある。しかし、律の疲労をそのままにはしておけない。そう思って『二度寝』を選んだ。ベッドに入って、いつもであればどちらからともなく近寄って何となく少しだけくっついて眠るが、怜花は律へ距離を詰めることをしなかった。律に背を向けて、ベッドからは落ちないが極力端に寄った。キングサイズのベッドの広さが今はありがたい。距離を充分に取れるのだから。

「んー…何?なんでそんな離れんの?」
「……また、その……泣いて、起こしたくない。律、目がちょっと赤い。充血してる。寝不足だよ。私が近くにいておかしくなっちゃったら律は絶対起きるし、そしたら二度寝の意味がない……から。」
「はー……なるほどねぇ。怜花ってさ、俺のためを思った願いを一番に通したいんだ。」
「え?」

 思わず怜花は振り返った。律のまっすぐで真剣な眼差しが怜花を刺す。

「だとしたら怜花が泣いてるのに気付けない俺は、俺の中で最悪なんだけど。最悪な気分になりたくないからこっちに来てって言ったら、怜花はこっちに来てくれるの?」
「で、でもそれは律の休みを奪っちゃう、よ。」
「2人でできる分だけ休もうよ、一緒に。泣いて起こしたっていいんだよ、怜花は特別なんだから。怜花から二人でこうしたいとかああしたいとか言うのが難しいってのはわかった。だから怜花は、俺がおいでって言ったらただこっちに来てよ。それが多分、怜花がギリ許せる甘えなんだと思う。」

 律の片腕が開かれる。硬かった律の表情がふっと和らいだ。

「おいで。」

(……また、戻ってくる。涙が、喉の奥で押さえきれない。)

 瞬く間に視界がぼやけて滲んでいく。悲しいわけでも苦しいわけでも、安心できたわけでもない。説明の出来ない涙がぱたぱたとシーツに落ちる。

「ずっといっぱい頑張ってたもんね。甘えたいときがあるって言ってくれたり、怜花から近付いてくれたり、抱きしめてくれたり。それは本当にちゃんと、怜花の精一杯だった。今になってやっと、なんかわかった気がする。甘えるってどういうことなのかなって怜花なりに思考錯誤してたんだろうけど、どれもね、全部嬉しくて楽しかったよ。だからおいで。俺をハッピーにするために、俺んとこにいて。自分のためにはできなくても、俺のためになってたら怜花はできるでしょ?」

(……上手いな、持っていき方が。だって本当に、その通りなんだもん。)

 怜花は上半身を起こし、手をベッドの上につきながら律の方に近寄った。律の腕がそっと怜花に触れ、そのまま緩く抱きしめる。ふぅと深く息を吐くと、怜花の頭をぽんぽんと軽く撫でるように律の手が動くのを感じた。