夜を繋いで君と行く

「隙だらけ。背中向けて寝てた人がさ、恥ずかしくなったら俺のとこにきて顔隠すとかさぁ、もうほんと……やってること可愛いんだよね、怜花って。割と最初っから。で、怜花は今、何したい?朝ご飯にする?まだいちゃいちゃする?」
「あ、朝ご飯!」
「作ってあるよ。じゃあ起きよ。」

 スッと律はベッドから出て立ち上がった。怜花の両手を引っ張って怜花をベッドから下ろす。そしてそのまま柔らかく手は握られ、リビングまで引かれる。

「ご飯炊けてるし、味噌汁はできる。怜花のストック使えばおかずも出せるよ。あ、鮭ある。鮭焼ける!」
「じ、自分でやるって。律は座って……。」
「だめですー。怜花は次何したいか考えておいて。怜花が俺と一緒にしたいことでもいいし、俺にしてほしいことでもいいよ。」
「してほしいことなんか……ない、よ。だって……。」
「だって?」

 律は怜花を椅子に座らせた。そしてしゃがみ、俯いてしまった怜花の表情を下から覗き見る。逃がさないと言ってはいないのに、手から伝わる熱は確かにそう言っていた。怜花は観念して、口を開いた。

「……充分、だから。」
「そっか。なるほどね。じゃあさ、一緒に考えよ。俺は全然充分って思ってなくて何かしたいわけ。そういう俺の気持ちを無下にしたいわけじゃないじゃん、怜花は。」

 怜花は頷くしかなかった。律の気持ちを蔑ろにしたいわけではない。

「だから、怜花からこれしたいなとかしてほしいなってことが出てきたほうが俺もやりやすいし、あとさ、何となくだけど……。」

 怜花は少しだけ顔を上げた。すると律は怜花に微笑みかけた。

「怜花は、言ったことが叶うってことをちゃんと経験した方がいい気がする。たとえばさぁ、怜花は昨日の自分が嫌だったかもしれないけど、涙見せたくないから顔隠すように抱きしめてとかならすぐ叶えてあげられるし。ちょっとしたお願いを、苦しくならずに言う練習だから、今日は。まずはさ、朝ご飯食べたいって言ってみてよ。朝ご飯作って、より言いやすいでしょ?」

 律の言う通りすぎるため、怜花は従うしかなく、ゆっくりと口を開けた。

「朝ご飯、食べたい、です。」
「ん。了解。怜花に仕込んでもらった腕前を披露するときがきたね!」

 にこにこと楽しそうにキッチンに向かう律に不意に泣きそうになって、怜花は何度も瞬きをすることでやり過ごした。