* * *
(……熟睡したのが4時過ぎ、かぁ。)
完全に深く眠ったことを感じた律が怜花をベッドに連れていき、寝かせてソファに戻って時計を見たらこの時間だった。もうすぐ朝が来てしまう。涙と震えの波は収まったと思えば何かをきっかけに戻ってきてしまい、呼吸が乱れるまではいかなかったものの、怜花のコントロール下にはもうないようにも見えた。
(まぁコントロールできてたらあんな風にはならない、か。)
床に落ちていた手紙を拾う。名前と文字の感じから察するに両親ではないだろう。この名前を見ただけで怜花はあの有様だったことを考えると、怜花の恐怖の根源は家族というよりは『一橋亜衣花』なのかもしれない。いずれこの話は聞くにせよ、当面はだめそうだ。とても話せるような状態ではないし、あんな風に泣かせたくない。
怜花の涙は苦しかった。怜花が自分に背を向けて連絡が取れなくなった12月を思い出す。三澄たちの手を借りて駆けつけた後に、二人きりになって真正面から見た涙を忘れたことはなかった。ただ、自分を責めて泣き続ける。『ごめんなさい』を繰り返す。それは今日も変わらなかった。声はかろうじて届いていたが、まだわからない『怖いこと』ですでに苦しいのに、泣いている自分を慰めるということをさせていることにも苦しさを感じてしまうようだった。
(怜花だって俺が苦しいとき、抱きしめに来たじゃん。同じなんだけどなぁ。)
怜花の温度に触れて、冷え切った心を元に戻してもらった。あの時、安心だけではない『何かが楽になった』という感覚があった。怜花を蝕む何かから解放されて『楽』になってほしいという気持ちは、多分似たようにある。
(……考えろ、何ができるか。)
律は時計を見つめた。食器を洗って、朝食用に炊飯器をセットする。冷凍庫には小分けの冷凍野菜が綺麗に並んでいる。ほうれん草を取り出して、そういえばコーンの缶詰があったことも思い出す。ほうれん草とコーンのバターソテーくらいならどうにかなる。豆腐とわかめの味噌汁ならそれもなんとかなる。まずは何があっても食べさせなくてはならない。前のように、食べられなくなって痩せてしまうのは絶対に避けたかった。痩せてしまっても、怜花は家事も仕事も手を抜かない。無理をさせるわけにはいかない。
(7時になったら八幡さんに連絡して、怜花が休めるか確認。事情話したらどうにかしてくれるんじゃないかな……多分。)
八幡からは時々連絡が来る。怜花は有休が余り過ぎているからもっと使わせなさいと言われていたことも思い出した。
(これだ!そう言ってましたよねって言ったら休ませてくれる!)
怜花がのんびりと1日過ごせるようにすること。たとえば恐怖に引っ張られてしまっても、『声』で戻ってきてくれるなら今日はずっと、離れずに傍にいる。そう心に決めて、律はキッチンに立った。
(……熟睡したのが4時過ぎ、かぁ。)
完全に深く眠ったことを感じた律が怜花をベッドに連れていき、寝かせてソファに戻って時計を見たらこの時間だった。もうすぐ朝が来てしまう。涙と震えの波は収まったと思えば何かをきっかけに戻ってきてしまい、呼吸が乱れるまではいかなかったものの、怜花のコントロール下にはもうないようにも見えた。
(まぁコントロールできてたらあんな風にはならない、か。)
床に落ちていた手紙を拾う。名前と文字の感じから察するに両親ではないだろう。この名前を見ただけで怜花はあの有様だったことを考えると、怜花の恐怖の根源は家族というよりは『一橋亜衣花』なのかもしれない。いずれこの話は聞くにせよ、当面はだめそうだ。とても話せるような状態ではないし、あんな風に泣かせたくない。
怜花の涙は苦しかった。怜花が自分に背を向けて連絡が取れなくなった12月を思い出す。三澄たちの手を借りて駆けつけた後に、二人きりになって真正面から見た涙を忘れたことはなかった。ただ、自分を責めて泣き続ける。『ごめんなさい』を繰り返す。それは今日も変わらなかった。声はかろうじて届いていたが、まだわからない『怖いこと』ですでに苦しいのに、泣いている自分を慰めるということをさせていることにも苦しさを感じてしまうようだった。
(怜花だって俺が苦しいとき、抱きしめに来たじゃん。同じなんだけどなぁ。)
怜花の温度に触れて、冷え切った心を元に戻してもらった。あの時、安心だけではない『何かが楽になった』という感覚があった。怜花を蝕む何かから解放されて『楽』になってほしいという気持ちは、多分似たようにある。
(……考えろ、何ができるか。)
律は時計を見つめた。食器を洗って、朝食用に炊飯器をセットする。冷凍庫には小分けの冷凍野菜が綺麗に並んでいる。ほうれん草を取り出して、そういえばコーンの缶詰があったことも思い出す。ほうれん草とコーンのバターソテーくらいならどうにかなる。豆腐とわかめの味噌汁ならそれもなんとかなる。まずは何があっても食べさせなくてはならない。前のように、食べられなくなって痩せてしまうのは絶対に避けたかった。痩せてしまっても、怜花は家事も仕事も手を抜かない。無理をさせるわけにはいかない。
(7時になったら八幡さんに連絡して、怜花が休めるか確認。事情話したらどうにかしてくれるんじゃないかな……多分。)
八幡からは時々連絡が来る。怜花は有休が余り過ぎているからもっと使わせなさいと言われていたことも思い出した。
(これだ!そう言ってましたよねって言ったら休ませてくれる!)
怜花がのんびりと1日過ごせるようにすること。たとえば恐怖に引っ張られてしまっても、『声』で戻ってきてくれるなら今日はずっと、離れずに傍にいる。そう心に決めて、律はキッチンに立った。



