夜を繋いで君と行く

「律、あの……。」
「ん?」
「今、私あの……律に何言われても……泣く。」
「え、えぇ!?なんで!?」
「……嬉しいのと、安心と……そういう律を信じてるのに、信じてないみたいな行動をしている自分が……きつくて。」

 怖いのは妹に会うこと、律がいなくなること、そして、信じているのに、信じ切れていないことを証明する動きを取ってしまうことだった。

「信じてくれてるよ、怜花。こーんな俺に体預けちゃって、どこが信じてないの?俺に好き放題ちゅーされちゃってんだよ?隙だらけじゃん。信じてなきゃ、隙はできないでしょ?」

 そう言うと、律は反対側の頬に唇をつけた。怜花がゆっくりと顔を上げると、律の顔が近付いてきた。触れるだけの優しいキスなのに、怜花はいつものように目を瞑ることはできなかった。

「ほーら、今度は口でしょ?なんならもう1回狙えるくらいぽやーっとしてるよ、怜花。……前はそんなんじゃなかったよ。少なくとも出会った頃はそうじゃない。少しずつ隙が増えたからキスできるの。まぁ、俺なんて怜花に対して隙だらけなんだから、もっとこういう抱きしめて~とかちゅーして~とかあっていいくらいなんだけど。言われなくてもするけどさぁ。」

 律は怜花の頬に手を添えた。そしてそのまま柔らかく唇は食まれた。頬に、耳たぶに、そして唇に戻ってくると律は名残惜しそうに唇を話した。

「ほーらし放題!怜花が安心してるから泣いてくれてるってわかってるよ。だから今日はとことん付き合う。明日仕事休みだし。丁度よかったよ。気の済むまで泣いて、疲れたら寝ちゃおう。」
「……仕事、休み?」
「うん。明後日にまとまったから、明日はオフだよ。なんか九重くんが一生懸命まとめてくれてる、仕事。」
「……そう、なんだ。」

 話せはするのに、涙は流れ落ちる。心と表情がちぐはぐで気持ち悪い。しかし大きな波が収まっても、まだ完全には止まらなかった。

「ずっといるよ、一緒に。どこにも行かない。明日は本当に、どこにも行かない。」

 律はそう呟くと、怜花の体をぐっと自分の胸に引き寄せた。

「だから怜花はこのまま俺に体重預けてゆっくりしな?目閉じて、呼吸することだけ忘れないで。」

 律の手が怜花の背を軽く撫で続けてくれる。いつもならばすぐに眠くなる魔法の手なのに、今日は全然だめだった。律に言われた通りに目を閉じても、全く眠くはならない。時折律のスウェットを握って、ハッとして手を離す。震えが収まったと思えば妹の声が聞こえてきて、また震えが始まってしまう。それを何度も繰り返して、一体今、何時になったのかもわからなかった。それでも律は『怜花、いるよ』とただ繰り返し、その声に何度も安心を貰ってようやく意識を手放すことができた。