夜を繋いで君と行く

 怜花は律の胸元にぐっと顔を埋めた。体を少し起こした律の吐息が耳に触れる。

「ごめん、ほんとに……全然、止まんない……。」
「え、いいよ別に。だって無限にくっついてていいんでしょ?怜花の方からこんな寄ってきてくれんのレアだし、大歓迎だけど。……でも、震えてんのは、早くおさまるといいな。寒い?」

 怜花は首を横に振った。寒さから震えが来ているわけではなかった。ただずっと、あの名前を見てしまってからずっと怖いのだ。今ここにいるわけでも、何かをしたわけでもないのに。手紙の中身を確認できないでいるのに。

「……こわ、い。」
「怖いんだ。だから震えてんだね。」

 怜花は首を縦に振った。ポロリと涙がまた律のスウェットに吸い込まれる。

「怖いの、どうやったら飛んでいくかな。って簡単には飛んでいかないか。とりあえずこのまんまでいいの?息苦しくないなら、もっと強くするけど。」
「……ちょっとだけ、強くしてもらっても、いい?」
「ちょっとだけ~?ぎゅーってしたいんだけどな、俺は。……ってうそうそ。ちょっとだけね、了解。」

 律の腕がゆっくりと強く抱きしめてくれる。加減されていることはわかる力加減が優しくて、温もりも優しくて余計に涙腺はだめになっていく。

(……嫌だ、な。こういうのが『なくなっちゃったら』)

「あ、あれ?なんかめちゃくちゃ泣いてない?どうしたどうした~?え、痛かった?」

 息が乱れる涙ではもうなかった。ただ、本当に止まらないだけだった。ぼろぼろと大粒の涙がひたすらに落ちていく。

「わかん、ない……こわ、い……。」
「怖いかぁ。ちゃんといるよ~一人じゃないよ~。」

 少しだけ首を傾けた律の唇が、怜花の頬に一度軽く触れた。よく知る唇の感触と離れた音が、怜花に今目の前にある現実をわからせてくれる。

「ね、今ちゅーされたの、わかった?」

 怜花は小さく頷いた。怖さに飲み込まれそうでも、律の温度はわかる。律がくれるものは、怜花を律に繋いでくれる。

「いなくならないよ。こんなさ、可愛くて大事な子置いてどこにも行けないでしょ。ていうか、怜花が手を離したって普通に握りに行くからね、俺が。何回離されても、俺からは離してあげないよ。」

 律の言葉にまた涙が加速する。律に対する不安は何一つないのに、妹に対する言い表せない気持ちが黒く広がっていくスピードが速すぎて、胸に広がる恐怖が消えてくれない。あっという間にあの頃の自分に戻されてしまう。物理的な距離を取っても、10年以上『奪われていなく』ても、いつだって一瞬で自分の『大切』を刈り取ってしまうのではと、そんな気持ちが勝ってしまう。