夜を繋いで君と行く

「……ごめん、なさっ……」
「んー?全然?怜花はまず息。はい、すこーしはいて。」

 涙があとからあとから零れ落ちて、瞬きも何の意味もなくて、むしろただシミを作るだけになってしまって苦しい。それなのに、律のスウェットを強く握ってしまう程度には、怜花の手に力が入っていた。

「体は脱力っていうか力入ってない感じなのに、手だけどうした~?」

 寒いわけではないのに、手がずっと小刻みに震えてしまう。離したら、いなくなってしまったら、――奪われてしまったら。

「……いなく、ならないで。」
「え?」
「律は……いなく、ならないで……お願い。」

 こんな子供じみた願いなんて、ばかばかしいと怜花だってわかっている。律がそんなことをしないことだって理解している。それなのに口をついて出た本音に、自分が言ったにも関わらず呆れてしまう。信じてないと言っているみたいで嫌なのに、それでも最初に出てきた願いはこれしかなかった。

「……そういう、こと。」

 律はそうつぶやくと、怜花の後頭部に手を回して、そのまますっぽりと頭が埋まってしまうように抱きしめた。

「怜花がもういいーって言うまで離してあげないから、怜花はもう手、緩めていいよ。そんなに力入れてたら痛いでしょ?」

 痛いのかどうかも、もうわからなかった。ただ、律の香りを吸いこめばまた少しだけ呼吸ができて楽になれる。

「……そうそう、息だけ気をつけよ。……できてる。その調子だよ。」

 頭の後ろに回った腕はそのままで、もう片方の腕で背中をポンポンと叩かれたり、さすられたりしている。そのリズムと体温が、少しずつ冷えた体の芯に届き始めた。
 怜花の手がゆるゆると、力をなくして落ちていく。体が完全に自分の方に傾いだことを感じた律は、怜花の頭頂部に唇をつけた。

「これ、いいポジションだー。いつでもちゅーできるし、怜花は完全に俺に全部預けちゃってくれてるし、俺得だね。」

 怜花は抱きしめられながらも小さく首を横に振った。

「……ごめんなさい……っく、い、意味、わかんない、よね。」
「今はね。でもいいよ。だって最終的には意味、わかるようになるし。それよりも息、戻ってきたね割と。このままで楽?このままでいい?」

 怜花はこくんと頷いた。

「……このままが、いい。」

(あぁ、本当に子供みたいで嫌になる。わがままで、思ったことを全部そのまま、ぼろぼろと落としてしまう。)

「うん。俺もこのままがいい。可愛い怜花を独占する時間~。」

 律の腕に抱きしめられると、本音を隠すことが難しくなる。温かさと優しさに傷が剝き出しになって、治したくなって縋ってしまうのだ。

(……苦しいって気持ちをそのままぶつけても、嫌って顔、されない、から…。)