「…律。」
「…うん。」
「律が私にお願いしないなら、私が律にお願い、してもいいの?」
「…いいよ。何?」
怜花は少しだけ首を伸ばして、律の耳元に唇を寄せた。
「…律の顔が、今見たいな。」
さっきまで即答で返ってきていた返事が飲み込まれた音がした。
「…待って、今…。」
「律。お願い。私、今律の顔見ないとダメなんだと思う。」
「…やだ。怜花のお願いだから叶えたいけど、…情けないところ晒して、嫌われたく…ない…。」
絞り出すような声に怜花の胸は軋む。みしっと板にひびが入ったかのように、痛い。『嫌われたくない』と何度も繰り返された言葉を、これほど痛く感じたのは初めてだった。
「好きだから、ここにいるんだよ?」
ひび割れて、砕けてしまいそうな心をギリギリで繋ぎとめるために律はきっと、自分を抱きしめている。怜花にはそんな確信があった。体に妙に力が入ってしまうのもわかる。力を抜いた次に、どこを掴めばいいのかわからなくなりそうな不安は、こういう時にはある。
「…律に好きって言ってもいい立場になって、心配してもいいんだって、心配だって言ってもいい人になって、今ここにいるの。律は私のこと、嫌いになっちゃった?」
「…何そのずるい質問。なるわけないじゃん。好きだから困ってんのに。」
一瞬の腕の緩みを感じて、怜花はそっと律の背から手を離し、律の顔が見えるくらいに距離を取った。そして律の表情を、少し下からまっすぐに見つめた。
両目のぎりぎりに溜まった涙が、律の瞬きとともに流れ落ちた。怜花は左目の目尻の涙を拭いながら、微笑んだ。
「…やっと見せてくれた。私は何度も律の前で泣いてるのに。やっとだよ、もう。」
律の右目の涙も指で拭うと、律の両頬にあてられていた手の上に律の手が触れた。
「…ごめん、なんかもう…どんどん大事なものが、…汚されていく気が…してて。」
「…うん。」
「…泣いたって解決しないし、仕事がなくなるわけじゃ…ないし。」
「そうだね。」
「…心配させたい…わけじゃなかった。」
「…そんなのね、知ってるよ。心配してなんて、私だって律に言えない。…律はいつも、私に対して過保護。だから私も、律に対して過保護になるよ。心配してって言われなくたって、心配はしてる。…『好き』ってたった一つの感情だけで、心配する権利を行使して、律が泣かなくていい夜にしたくて律に触れてる。」
「…うん。」
「律が私にお願いしないなら、私が律にお願い、してもいいの?」
「…いいよ。何?」
怜花は少しだけ首を伸ばして、律の耳元に唇を寄せた。
「…律の顔が、今見たいな。」
さっきまで即答で返ってきていた返事が飲み込まれた音がした。
「…待って、今…。」
「律。お願い。私、今律の顔見ないとダメなんだと思う。」
「…やだ。怜花のお願いだから叶えたいけど、…情けないところ晒して、嫌われたく…ない…。」
絞り出すような声に怜花の胸は軋む。みしっと板にひびが入ったかのように、痛い。『嫌われたくない』と何度も繰り返された言葉を、これほど痛く感じたのは初めてだった。
「好きだから、ここにいるんだよ?」
ひび割れて、砕けてしまいそうな心をギリギリで繋ぎとめるために律はきっと、自分を抱きしめている。怜花にはそんな確信があった。体に妙に力が入ってしまうのもわかる。力を抜いた次に、どこを掴めばいいのかわからなくなりそうな不安は、こういう時にはある。
「…律に好きって言ってもいい立場になって、心配してもいいんだって、心配だって言ってもいい人になって、今ここにいるの。律は私のこと、嫌いになっちゃった?」
「…何そのずるい質問。なるわけないじゃん。好きだから困ってんのに。」
一瞬の腕の緩みを感じて、怜花はそっと律の背から手を離し、律の顔が見えるくらいに距離を取った。そして律の表情を、少し下からまっすぐに見つめた。
両目のぎりぎりに溜まった涙が、律の瞬きとともに流れ落ちた。怜花は左目の目尻の涙を拭いながら、微笑んだ。
「…やっと見せてくれた。私は何度も律の前で泣いてるのに。やっとだよ、もう。」
律の右目の涙も指で拭うと、律の両頬にあてられていた手の上に律の手が触れた。
「…ごめん、なんかもう…どんどん大事なものが、…汚されていく気が…してて。」
「…うん。」
「…泣いたって解決しないし、仕事がなくなるわけじゃ…ないし。」
「そうだね。」
「…心配させたい…わけじゃなかった。」
「…そんなのね、知ってるよ。心配してなんて、私だって律に言えない。…律はいつも、私に対して過保護。だから私も、律に対して過保護になるよ。心配してって言われなくたって、心配はしてる。…『好き』ってたった一つの感情だけで、心配する権利を行使して、律が泣かなくていい夜にしたくて律に触れてる。」



