* * *
律は食事中に重たい話は一切しなかった。行った先々で食べたものや見たもの、そしてその空気感を話しながら時折何かを思い出したように表情が固まった。ゆっくりと意識をこの場所に戻して話を続ける様子を見つめながら、怜花は努めて穏やかな表情を浮かべるようにした。
鍋が空っぽになるまで食べた様子を見る限りでは、食欲はちゃんとあるし、食べている間の表情は柔らかかった。怜花は土鍋を流しに置いて水を浸した。洗うのは明日でいい。
「食休みにさ、カモミールティー飲まない?お気に入りのお店でちょっと可愛いパッケージの見つけたから、買ってみたんだ。」
怜花はキッチン越しにパッケージを見せた。少しだけ律の表情に笑顔が戻る。
「なんか明るくて可愛い。」
「ね。ストック、置いておいてもいい?」
「うん。」
律はソファに深く座って、遠くをぼんやりと見つめていた。
「もう寝る?」
「…ううん。まだ、眠れない。」
「そっか。じゃあカモミールティー、淹れちゃうね。」
「…うん。ありがとう。」
怜花はマグカップを二つ持って、ソファ前のテーブルに置いた。
「ごめん、熱々かも。ちょっと置いて冷ましてから飲もっか。」
「うん。」
怜花は律の隣に座った。そして、そっと律を抱きしめた。
「…そろそろ、話す気になった?」
怜花の腕の中で律が少しだけ体の向きを変えて、怜花を抱きしめる。怜花の肩におりてきた律の頭が小さく横に振れた。
「…楽しい話は、尽きちゃった。」
「楽しくない話も、尽きた?」
またしても律の頭は横に振れた。
「愚痴一つ、零してないよ。今日はそれを拾うために来たのに。」
「…そうなの?」
「そうだよ。いつ話してくれるかなって思ってたら、ご飯の間に一つも嫌だった話とか出てこないんだもん。だったら今でしょう?」
怜花を抱きしめる律の腕が強くなる。怜花は律の背中を軽くポンポンと叩く。
「…律。」
「何…?」
「楽しくない話をされても大丈夫だよ。…疲れてるんだよね?だから疲れをとってほしいって私に言ってもいいし、何かしてほしいことがあるなら…全部はできないかもだけどやれる範囲で頑張るし、…えっと、上手く言えないけど…あ、甘やかす準備はできてます!」
律は何も言わず、かといって離せないと言わんばかりに腕には力が入っていた。怜花の耳元で浅い呼吸の音がして、その音からも不安が伝わってくる。
律は食事中に重たい話は一切しなかった。行った先々で食べたものや見たもの、そしてその空気感を話しながら時折何かを思い出したように表情が固まった。ゆっくりと意識をこの場所に戻して話を続ける様子を見つめながら、怜花は努めて穏やかな表情を浮かべるようにした。
鍋が空っぽになるまで食べた様子を見る限りでは、食欲はちゃんとあるし、食べている間の表情は柔らかかった。怜花は土鍋を流しに置いて水を浸した。洗うのは明日でいい。
「食休みにさ、カモミールティー飲まない?お気に入りのお店でちょっと可愛いパッケージの見つけたから、買ってみたんだ。」
怜花はキッチン越しにパッケージを見せた。少しだけ律の表情に笑顔が戻る。
「なんか明るくて可愛い。」
「ね。ストック、置いておいてもいい?」
「うん。」
律はソファに深く座って、遠くをぼんやりと見つめていた。
「もう寝る?」
「…ううん。まだ、眠れない。」
「そっか。じゃあカモミールティー、淹れちゃうね。」
「…うん。ありがとう。」
怜花はマグカップを二つ持って、ソファ前のテーブルに置いた。
「ごめん、熱々かも。ちょっと置いて冷ましてから飲もっか。」
「うん。」
怜花は律の隣に座った。そして、そっと律を抱きしめた。
「…そろそろ、話す気になった?」
怜花の腕の中で律が少しだけ体の向きを変えて、怜花を抱きしめる。怜花の肩におりてきた律の頭が小さく横に振れた。
「…楽しい話は、尽きちゃった。」
「楽しくない話も、尽きた?」
またしても律の頭は横に振れた。
「愚痴一つ、零してないよ。今日はそれを拾うために来たのに。」
「…そうなの?」
「そうだよ。いつ話してくれるかなって思ってたら、ご飯の間に一つも嫌だった話とか出てこないんだもん。だったら今でしょう?」
怜花を抱きしめる律の腕が強くなる。怜花は律の背中を軽くポンポンと叩く。
「…律。」
「何…?」
「楽しくない話をされても大丈夫だよ。…疲れてるんだよね?だから疲れをとってほしいって私に言ってもいいし、何かしてほしいことがあるなら…全部はできないかもだけどやれる範囲で頑張るし、…えっと、上手く言えないけど…あ、甘やかす準備はできてます!」
律は何も言わず、かといって離せないと言わんばかりに腕には力が入っていた。怜花の耳元で浅い呼吸の音がして、その音からも不安が伝わってくる。



