「…個人的に仲良くするつもりなんか、あるわけないのに。そうできないことが信じられない、みたいな勢いで近付いてくる。ご飯なんか、一緒に食べたくない。どこで誰に撮られるかわかんないし、それを既成事実だとでも言っていいように使うような人にも見える。…彼女のやってるSNS、九重くんがいろいろ調べてくれたけど、やっぱり男をとっかえひっかえしてるし、匂わせも平気でするし、それで注目を浴びることを快楽だと捉えるタイプっぽい。…全部無理じゃん、そんな人。」
「…それはまた…爆弾のような人だね。」
「うん。…俺はそんな、爆発物の隣に立ちたいわけじゃない。普通の、そのまんまでいいちょっとした幸せがいい。何気ないことを、普通に怜花としていたいだけ。要らないんだよ、そういう刺激も話題性も。他人に食い尽くされるのなんて、まっぴら。」
もしかすると、他人に食い尽くされそうになったことがあるのかもしれない。そんなことを思う。律にしては冷たい言い方で、らしくないから妙に残る。
「…どうしたら、いいかな。」
「え?」
「舞台挨拶で変に距離取ったらそれはそれで問題になっちゃうもの?」
「…うーん、どうだろう。まぁ、でも取るけどね距離は。仲良くないんですかとか聞かれたって、別に一緒に収録したわけでもないから、仲がいい方が変だし。」
「収録は一緒じゃなかったんだね。」
「うん。五十嵐監督って結構一対一で収録付き合ってくれるタイプの監督で、一緒に作品作りできてそれは楽しかったし、意見のすり合わせっていうか、こういう風にやっちゃっても大丈夫かとか聞いても、色々やってみた上で細かいニュアンスも見てくれたり、アイデアも出してくれたりしてさ。そういう作品作りが好きだから、五十嵐監督からのオファー来たときは結構嬉しかったんだよね。」
「そっかそっか。というかさ、ちょっとアニメオタクとしての見解、言ってもいい?」
「え、うん。」
ほどほどにアニメを見る程度でオタクを名乗っていいのかはいささか心配だが、舞台挨拶で演じ手から話を聞けるのだとしたらきっと―――。
「本当に作品が好きな人は、今話してくれたみたいな話が聞きたいかな。演者同士の仲の良さなんてどうでもよくて、どういう風に作ったかとか、工夫したかとか、思い入れとか。私が声優オタクじゃないっていうのもあるかもしれないけど、純粋に作品が好きな人に律の言葉が届けばいいんだったら、律の作品作りとか、作品への思いをブレずに話せばいいのかなって。そういう話、私は作品のファンだったら聞きたいし、それを聞いてもう一回映画観てみようかなって思うかも。」
「…そっか。じゃあ、あの子が変なこと言っても、俺は作品への思いとか、こういうとこ頑張ったみたいなとこを言えばいっか。」
「うん。それで彼女がもし仮に変な方向に話を持っていったとしても、心あるファンというか…少なくとも作品のファンには律の言葉がちゃんと届くような気がするよ。その…ゆりあさん…だっけ。そのファンの方はわかんないけど、全員に好かれるのは無理っていうか…。」
「そうだね。ってか彼女が俺とベタベタしてたら、ファンは俺をよく思わないでしょ。」
「…そ、そっか。それで律に変な目が向けられちゃう…?」
「かもしんないねぇ。…でも、うん。怜花が言ってることは正しいって思うし、なるべくその方向で頑張る。…頑張ります。」
「…頑張れ、しか言えないけど。」
「充分だよ。あとは、明日出かける前にハグだけしてください。」
「…ちゃっかりしてるね。」
うん、と頷いた律が力無く微笑んだ。
「…それはまた…爆弾のような人だね。」
「うん。…俺はそんな、爆発物の隣に立ちたいわけじゃない。普通の、そのまんまでいいちょっとした幸せがいい。何気ないことを、普通に怜花としていたいだけ。要らないんだよ、そういう刺激も話題性も。他人に食い尽くされるのなんて、まっぴら。」
もしかすると、他人に食い尽くされそうになったことがあるのかもしれない。そんなことを思う。律にしては冷たい言い方で、らしくないから妙に残る。
「…どうしたら、いいかな。」
「え?」
「舞台挨拶で変に距離取ったらそれはそれで問題になっちゃうもの?」
「…うーん、どうだろう。まぁ、でも取るけどね距離は。仲良くないんですかとか聞かれたって、別に一緒に収録したわけでもないから、仲がいい方が変だし。」
「収録は一緒じゃなかったんだね。」
「うん。五十嵐監督って結構一対一で収録付き合ってくれるタイプの監督で、一緒に作品作りできてそれは楽しかったし、意見のすり合わせっていうか、こういう風にやっちゃっても大丈夫かとか聞いても、色々やってみた上で細かいニュアンスも見てくれたり、アイデアも出してくれたりしてさ。そういう作品作りが好きだから、五十嵐監督からのオファー来たときは結構嬉しかったんだよね。」
「そっかそっか。というかさ、ちょっとアニメオタクとしての見解、言ってもいい?」
「え、うん。」
ほどほどにアニメを見る程度でオタクを名乗っていいのかはいささか心配だが、舞台挨拶で演じ手から話を聞けるのだとしたらきっと―――。
「本当に作品が好きな人は、今話してくれたみたいな話が聞きたいかな。演者同士の仲の良さなんてどうでもよくて、どういう風に作ったかとか、工夫したかとか、思い入れとか。私が声優オタクじゃないっていうのもあるかもしれないけど、純粋に作品が好きな人に律の言葉が届けばいいんだったら、律の作品作りとか、作品への思いをブレずに話せばいいのかなって。そういう話、私は作品のファンだったら聞きたいし、それを聞いてもう一回映画観てみようかなって思うかも。」
「…そっか。じゃあ、あの子が変なこと言っても、俺は作品への思いとか、こういうとこ頑張ったみたいなとこを言えばいっか。」
「うん。それで彼女がもし仮に変な方向に話を持っていったとしても、心あるファンというか…少なくとも作品のファンには律の言葉がちゃんと届くような気がするよ。その…ゆりあさん…だっけ。そのファンの方はわかんないけど、全員に好かれるのは無理っていうか…。」
「そうだね。ってか彼女が俺とベタベタしてたら、ファンは俺をよく思わないでしょ。」
「…そ、そっか。それで律に変な目が向けられちゃう…?」
「かもしんないねぇ。…でも、うん。怜花が言ってることは正しいって思うし、なるべくその方向で頑張る。…頑張ります。」
「…頑張れ、しか言えないけど。」
「充分だよ。あとは、明日出かける前にハグだけしてください。」
「…ちゃっかりしてるね。」
うん、と頷いた律が力無く微笑んだ。



