夜を繋いで君と行く

「…そんなことないのに。」

 律の指の間を怜花の髪がするんと通り抜けた。律は怜花との距離を少し詰めると、怜花の顔を覗き込みながら口を開いた。

「なんで一緒に住もうって思ってくれたの?」
「…この前、律が熱出した時、一緒に住んでたら連絡なくても気付けてたし、もしかしたら職場に行く前に行かせないで寝かせておくこともできたかもしれないなって思って。あと、…私が風邪ひいた時も同じ家なら、…距離はとるけど、なんとなく近くにいてもらえるかな…とか。…具合悪かった時に律の顔見て安心しちゃったからっていうのもあるけど。あと…。」
「あと、何?」
「…い、色々並べたけど、でも結局…。」
「うん。」

 律の目からは逃れられないということは、この数ヶ月で幾度となく経験していた。ただそれは強引さを伴うものではなく、ただ心に触れたくてそうしているのだということが今はシンプルにわかる。だから怜花も、律の心に近付くために隠していた本当の気持ちの欠片を差し出して、『同じ』になりたかった。

「…毎日律に会いたいだけなんだよ、私が。」

 そう言い切ると、律は「はぁー」と深く息を吐いて、コテンと怜花の肩にもたれた。

「怜花も毎日会いたかったの?」
「…そ、そうです。」
「…俺も毎日会いたかったよ。それって叶うんだ…。」
「叶え…ます。」
「やった。…叶えてくれて、ありがとう。」
「…やっぱり嫌だとか、一人暮らしの方がいいとかそういうの、後出しは困るし嫌だよ?」
「そんなこと言うわけないでしょ。…家帰ってきたら怜花がいて、俺が怜花を待つ日もあるんでしょ?…そんなの最高じゃん。朝と夜は一緒に食べれるし、朝起きて最初に会う人は怜花で、一日の終わりに見る人も怜花なんてさ、毎日楽しいことしかないね、そんなの。」

 怜花が隣を見やると髪の隙間から見える律の耳が赤く染まっていた。そんな律を見ていると、勇気を振り絞ってよかったと心から思える。こうやって自信を少しずつもらっているから、また一歩踏み出せる。

「…あの、時期は割とすぐでも、…いいの?」
「むしろいいの?」
「いいから聞いてるんだけど…。」
「いつでもいいよ。今日からでも明日からでも。荷物がどれだけでも。っていうか別のところに引っ越した方がいいの?うちでいいの?」
「こ、ここがいいよ!二人で引っ越しってなったら大変だし、…それにここには…忘れたくない思い出がいっぱいあるから、ここがいい。」