夜を繋いで君と行く

* * *

 笑顔の奥に揺れる本当の心の全てが見えるわけではないけれど、その類の笑顔に見覚えがあって、律の言葉を否定したくて怜花は強く頭を横に振った。

「…かっこよくなくても、いいんだよ。本当の気持ちを話してくれる方が…嬉しい、から。」
「また怜花は俺を甘やかすねー…今日、何回も確認したのはさ、怜花が本当に無理してないかももちろん心配だったけど、…自信もなかったからなんだなって。怜花にまっすぐ『大丈夫』って言われてハッとした。『欲しい』と『俺で大丈夫か』っていう、…うーん…なんか、相反する気持ちっていうのかな。それは同時に在れるもんなんだね。」

 律の苦笑が少しだけ反響した。怜花の頬に触れていた手が湯船の中に落ちる。その手を怜花はお湯の中で探して、捉えた指先を握った。

「…ずっとあるよ、そんなの。私の中にも、ずっとある。」
「そうなの?何がぶつかり合ってる?」
「…律の喜ぶことがしたいのに、あと一歩の勇気が出なくていつもできなくて。…いつも律に先にさせちゃうの。私がもっと、好き…とか…。」
「うん。」
「抱きしめたりとか、もっと一緒にいたいって言ってたら、…律はもっと自信がもてたと思う。…私が今、こうやって向き合う勇気とか、自信とかが前よりもあるのは、律がずっと好きって言ってくれて、可愛いって言ってくれて…私がいいって言い続けてくれたからだよ。…もっと、自信もってほしい。律だから大丈夫で、律だから…一緒に眠れるの。それも朝までぐっすり。」

 一人で眠れない夜を何度も過ごして、誰かがいてくれたら眠れるのかもと期待して、そしてそれはあっけなく砕け散って。律と初めて一緒に過ごした夜の優しさと温度は、今振り返っても特別で忘れられない。きっと一生、忘れない。

「…怜花。」
「何?」
「…こっち、来て?」
「う…うん…?えっと、このまま?」
「真正面だと足がぶつかっちゃうか。じゃあ俺に背中向けて、足の間に来てほしい。…ちょっと可愛くて、たまんないから抱きしめたい。」
「…また律が先にしちゃうの?」
「え?」

 怜花は言われた通りに移動し、律の背に自分の背を一度預けた。そして後ろを振り返って律の首に腕を回した。

「…『抱きしめて』も『キスして』も…正当な要求だよ。そういう触れ合いが必要だって律が思う時は、本当に必要な時なんだと…思う。…律みたいにすぐパッとキスはできないかもだけど、一呼吸置けば、私だってできるから。…できるよ。頑張れる。」

 怜花の体をそのまま抱き込むように、律の腕が回った。深く呼吸をする音が聞こえて、いつもより早い鼓動が伝わって、怜花は思わず微笑んだ。