夜を繋いで君と行く

「…声はさぁ、もはやしょうがないって。諦めて。緩んだらこの声なんだよ。仕事ではもっと気張ってるでしょ?」

 怜花はコクコクと頷いた。小刻みな動きに合わせて湯船の水面が揺れる。

「でもまぁ、甘えん坊で可愛い~とかだけだったら俺も男としてどうなのって感じだし、『かっこいい』って思ってもらえる要素、多少なりともあってよかった、ほんとに。」
「…かっこいい、だけじゃなくて。」

 怜花が、頬に添えられた律の手にそっと自分のものを重ねた。

「…もっと色々、ある。律には。可愛いなって思う時もあるし、…嬉しいなとか、優しいなは多いかな。…ちょっと近くに寄りたいなとかも…お風呂は、思っていた以上に恥ずかしいけど、でもこういうゆっくりただ話すだけでちょっと優しい気持ちになれるの、…律だからなんだなって思う。恥ずかしいのはなくならないけど、でも恥ずかしくても、そういう私を見越して一緒にいてくれるの、律だけだよ。」

 怜花の顔がまた湯船に沈んでいく。そんな姿につい、笑ってしまう。

「…怜花だけなんだよね、俺にとっては。ただまっすぐ、見つめ返してくれる人は。」
「…律ほど見つめてないと思うんだけど。」
「怜花にこっち見てほしくて見てるから、そりゃ俺の方が見てるよね。…でも怜花はさ、最初からずっとまっすぐだったよ。自分が見たもの、話したこと、聞いたことだけで俺を見てくれた。ちょっと調べたら出てくる俺の情報も入れず、先入観ももたずに、一緒に過ごした時間だけで見てくれたでしょ?…そういうところがやっぱり好きだなぁって。」
「い、いきなり何っ…?」

 ずっと顔が赤いままにさせておくのは可哀想だなと思うものの、やっぱり照れた顔は自分だけの特権だとも思うから、つい嬉しくなって口角が上がってしまう。

「好きだなぁって思うことが増えてく。一緒に何かしたいって思うのも、怜花が初めてなんだと思う。…怜花とだからしたいんだよね、どんなことも。…それが今日、やけにストンと落ちた気がする。…たとえばさ、もっと上手いと思ってたとか、慣れてるって思ってたって言われたセックスも、…怜花とだからしてみたかった。怜花のどんな表情も見たかったし、…安心したかったのかも。怜花に抱きしめられると、俺は無条件の安心を手に入れちゃうから。…またかっこよくはない話しちゃってんね。」

 仕事ならまだしも、好きな人と付き合うことについての自信があるわけではなかった。だからどうしても本音を溢してしまえば情けない自分が出てしまう。