夜を繋いで君と行く

「怜花の番だよ。2つ質問どうぞ。」
「…んっと…そうだね。…じゃあ、うん。思い切って聞きます。」
「思い切って?何それ、わくわくするじゃん。」
「…自信があっていいなぁ、ほんと。えっとじゃあ、してもらって嬉しいことと、してほしくないことを教えてください。」
「んー…。」

 律の両腕が怜花の腹部に伸びぎゅっと抱き寄せる。怜花の肩に頭を乗せるいつものスタイルに戻って、律はしばらく沈黙した。

「それって、怜花にしてもらってってことで考えていいの?それとも一般的にというか、世の人にってこと?」
「私にと、他の人で何か違う?それ。」
「うん、結構違う。」
「それ、両方聞いたら4つになっちゃうかな、質問。」
「真面目だねぇ。いいよ、両方でも。っていうか怜花にしてほしいこととしてほしくないことなんて1個ずつしかないし。」
「何?」

 怜花はテーブルに置いていたペンを握った。律がすりっと頬を寄せる。

「してほしくないことは、俺を嫌いになること。それに伴う行動は全部嫌だけど、他は全部してもらったら嬉しいことだよ。」
「それに伴う行動って何?」
「嫌いだから距離を取る、会話しない、会えないとか。そういうの。俺の前からいなくなるのが一番嫌だ。それって俺を嫌いだからじゃん。嫌われなければそういう行動にはならないでしょ?だから嫌いって感情に基づくことじゃないものは全部、嬉しい。」
「…なんか、範囲が広すぎないかなぁ?」
「そう?でもほんとにそうなんだって。いっぱい気遣ってもらえてもそりゃ嬉しいけど、ちょっと顔合わせるだけで嬉しいの。」
「…そっか。じゃ、じゃあ他の人だとどうなるの?」
「してほしくないことが増える…かな。」

 怜花は思わず横を見た。

「…どういうこと?」
「俺のことを知ろうとしないでほしいし、距離を縮めようなんて思ってもらわなくていい。」

 普段それなりの人の中で生きている人とは思えない、明確に距離を取るような言葉に怜花は小さく息を飲んだ。

「してもらって嬉しいこともあるよ、仕事を認めてもらえたら嬉しいし、応援してもらえるのも嬉しい。でも、仕事の境界線を越えて自分の内側に入ってきてほしい人は…そんなにいないね。」
「…そう、だね…。うん、そんなにいない。自分が知りたいって思う人も、知ってほしいって思う人も。」
「うん。そう。だから明日は、怜花の誕生日一日祝って、買い物デートしながら怜花がどういうものが好きかとか、怜花に似合う服とか一緒に選ぶの、楽しみなんだ。…楽しみ。」

 きゅっと回った腕の強さに、怜花は目を閉じた。その温度と甘さを体に覚えさせることに集中し、ふぅっと長く息を吐いた。