夜を繋いで君と行く

「現状、俺への不満は?」
「不満?ないね。」
「ないの?」
「ないよ。」
「変えてほしいところとか、思ってたのと違うとかも?」
「質問が2個増えたから、あと2個私が質問して終わりにするけどいい?」
「いいよ。それで、変えてほしいところとかない?」

 微笑んでいるのにどこか寂しげに律の瞳が揺れた。怜花はつられるように笑みを落とし、口を開く。

「何もないです。思ってたのと違うって思えるほど、律のことを知ってたわけでもこんな人だろうなって思ってる想像があったわけでも何でもないから、むしろ今こんなに色々な面を見せてもらっていいのかなって戸惑いの方が多いくらいだよ。」
「…こんな人なんじゃないかなーとか、なかったの?」
「意外と器用だなとか、実はすごく繊細なんだなとかそういうのは…言葉の端々とか、料理してる手つきとか、見たり話したりしてわかってきたことって感じで、自分が見たものや知ったこと以外のことで先に律に対してこんな人だろうみたいなの、なかったよ。」
「…さすがだね。はぁー…。」

 怜花の腹部に回っていた両腕のうち右腕が離れ、怜花の左頬に手が伸びてきた。顔の距離を縮められて一瞬ドキッとするが、これはキスされるわけではないということがわかって、怜花は目を閉じるのを止めた。この律はきっと目に焼き付けておかなくてはならない律だ。目を閉じたまま律は怜花の額に額を重ねた。そのままの律を、怜花は静かに見つめる。

「思っていたよりも優しくない、淡白だ、自分を優先してくれない。…そういうの、ないの?」
「…優しすぎるし甘すぎるし、何でもしたいって言うし、私の無茶や無理に敏感で過保護。全部真逆をいってると思うけど…。」
「もっとデートしたい、甘やかしてほしい、恋人っぽいことしてほしいとかは?」
「…その、お家にこうやって来させてもらってるので充分だし、…これ以上甘やかされると私はダメ人間になると思うし、…恋人らしいことができてないのは私の方なので…そこを責めたら私は自分の首を絞めるのと同じことになっちゃうんだけど…。」
「…俺の方こそ言わせたね、いろんなこと。怜花なら今までの人みたいなこと言わないって、わかってんのに。」
「…い、言えてた?ちゃんと。」
「欲しいの、どんぴしゃです。」
「良かった…。」

 怜花は心の底から安堵した。全て本心だからするりと出てきたが、律のことをあまり知らないから、何を求められているのかはいつだってわからない。今はただ、少しだけ滲んだ不安や寂しさを取りこぼさないようにするのに必死だった。