夜を繋いで君と行く

* * *

 目が覚めたのは、怜花にしては遅めの7時半を少し過ぎた頃だった。少し見上げると律の寝顔が近くにあり、よく眠っているようでそんな姿にくすっと笑ってしまう。この距離にも、こうやって朝を迎えることもまだ数えるほどしかしていないのに、随分と慣れたものだと思う。それもこれも、律がいつもこうして抱きしめていてくれるからだった。

(…帰って来た時、ちょっと話した…っけ?記憶が曖昧だな…夢…って言われたら夢な気もする…。ってことは律がこうやって抱きしめるくらい近くに寄っても起きなかったの私?…緩んでるなぁ…もっと敏感だったでしょう?)

 他人がこの距離まで近付いてきたのにはっきりと意識が覚醒した覚えはない。だとすれば、緩むにも程があるほど警戒心というものが薄れている。律に対して警戒心はもうないのだが、それがこんな形で体にも表れていることには素直に驚く。実家の家族のことを考えるだけで体が震えることがあるのに。もう10年以上、会っていないのに。

 怜花はゆっくりと律の腕から抜け出そうとした。しかし、怜花の動きで目を覚ました律の腕は、それを許さない。

「…だめ。まだやだ。」
「…おはよ。律はまだ寝てて。昨日、遅かったわけだし。」
「怜花は起きちゃうの?」
「お雑煮作ろうかなって思ってて。あとおせちもね、ちょっと作ってあるよ。今日から律、お正月休みだし。気合入れます。」
「…気合入ったご飯楽しみすぎるけど…ん-…でももうちょっと寝ないとぼーっとしそうで…。」
「当たり前だよ。まだ4時間くらいしか寝てないんじゃない?寝不足だよ、そんなの。寝てていいよ。」
「…手伝いたいのに…眠い…まだ…。」
「寝ててってば。」
「…一緒がいいの。やっと一緒にいられるんだから。」

 律の腕がぐいっと強めに怜花を引く。とろりと溶けたような表情の律が視界いっぱいに広がったと思ったら、唇には甘い音が乗った。

「…今年初のちゅーです。」
「…い、言わなくていいの、そういうのは。」
「2回目もいいですか?」
「だ、だめ!律は寝てて。私はやることがいっぱいあるの!」
「…じゃああと1回したら大人しくしてます。手伝えなくてごめん。…ちょっとまだ眠い。」
「いいよ、そんなのは。」

 怜花がそう言うと、律の手が怜花の後頭部をそのまま引き寄せ、長く唇は重なった。

「…ちょっとチャージ、加速した。」
「…それは…よかったけどっ…。」
「顔赤い。」
「そういうのも言わなくていいの!ちゃんとわかってるから。」
「わかってんの?…そっか。…今年も安定して可愛いね。その調子でずっと可愛くいてね。」
「お雑煮作るっ!」

 怜花のいつも通りの逃走に、律はベッドの中でくすくすと笑った。