夜を繋いで君と行く

* * *

 帰宅したのは3時を少し過ぎた頃で、いつも通りの流れで風呂に入り、髪を乾かして寝室に向かう。疲れていて足取りは重いはずなのに、心は妙に浮足立っていた。それもさすがに今年は仕方がない。おそらく生まれて初めて、大切だと思う人と過ごす新年なのだから。

 新年最初に見る怜花の顔が穏やかで可愛くて、布団にもぐって距離を詰めるとより一層愛しさだけが増した。起こさないように慎重に近寄って、緩く背中に腕を伸ばす。起きているときならば引き寄せるが、動かすと起こしてしまいそうで律の方から距離を寄せて近付いた。しかし敏感な怜花は、わずかな揺れでも意識を少しだけ浮上させた。

「…ん…律…?」
「…ごめん。起こした。怜花を起こさないの、高難易度ミッションすぎる。」
「…おかえり。」

 柔らかな気の抜けた笑顔を見せた怜花は、どうやらまだ意識がふわふわとしているようだ。であれば、はっきりと目覚めてしまう前にもう一度夢の世界に誘いたい。そう思って律は怜花をそのまま抱きしめて、耳元で囁く。

「…ただいま。寝ちゃいな。起こしてごめんね。」
「…ううん。大丈夫。…ちゃんと帰ってきて、良かった。」

 律の体温にすり寄るように、怜花がそのまま律の肩の少し下に顔を埋める。律はそっと、怜花の頭頂部に唇をつけた。

(…寝ぼけてるからすり寄ってきてる?どちらにせよ可愛すぎるんだけど。)

 目を閉じて眠ってしまうのが惜しい。こんなに可愛くて愛しい人を、見つめていたい。この距離を許されて、こうやって心と体を預けてくれることは当たり前ではないのだから。すぐに閉ざして本当の心は見せずに、涙も言葉も隠してしまう人。そして、男に体に触れられるということをきっと、どこか苦手としている人。怜花の見た目や過去の言動からも理由はいくつも思い当たるし、そのどれもが外れていてほしいと思うけれど、きっとそれらのうちのいくつかはヒットしているだろう。たくさん傷ついて、だから誰かに手を伸ばすことを止めた人でもある。それは等しく、自分も同じだった。

(だから、怜花が伸ばした手は絶対離さないって決めてんの。)

 自分が伸ばした手を怜花はいつも受け入れてくれる。それだって簡単なことではないのだと、あの日の涙でわかっている。二度と怜花の心が手折られることがないように、できる限りでずっと触れて慈しんでいたい。

「…待つ人がいるんだもん。帰ってくるよ。帰ってくるのがね、日に日に楽しみなんだよ。」

 すうすうと小さな寝息を立てる寝顔にそっと囁いた。耳元で囁いたのに赤くならないのは少しつまらない。夢の中にでも自分が出て何かやらかしてくれないかななんて、そんなことを思って律もそのまま目を閉じた。