夜を繋いで君と行く

『美味しかったのなら何より。配信見てるよ。仲がいい事務所って話だったけど、見てても伝わる。』
『ほんと?よかったー。あ、でも怜花、配信終わったら絶対寝てね。俺が帰るまで起きて待とうとかしないで。出かける時にも言ったけど。』
『本当に寝ちゃっていいの?』
『だって帰るの3時とかだと思うし。』
『3時か…。今からコーヒー飲めば何とかなるよ?』
『何とかしないで。しちゃダメです。寝てて。』
『わかった。お風呂のお湯は張ってあるから、追い炊きしてあったまってから寝てね。』
『はーい。怜花寝てても、抱きしめちゃったらごめんね。』
『起こしてもいいよ。律がしたいこと優先してね。』
『いやそこは、起こさないように慎重にやります。そろそろ戻る!おにぎりも美味しかった!明日の朝ご飯は一緒に食べよ!』
『うん。じゃあ、今年最後の仕事、頑張ってきてね。帰ってくるの、待ってます。寝ちゃうけど。』
『寝ちゃっても可愛いので大丈夫。安心して寝てください。』

 今年が終わり、新しい年が来るそのタイミングで同じ場所にはいられない。それでも、そのことが気持ちを暗くさせることは少しもなかった。それは律が、怜花との時間を大切にしてくれていることがこれ以上ないくらいにわかるからだった。

 自分だって疲れていて眠いだろうに、それでも怜花に無理をさせないことを常に優先するから寝るように何度も言ってくる。過保護はずっと治らない。でもその過保護さは、窮屈ではない。これが『大切にされる』ということなのだと、体と心が理解してきたように感じる。
 抱きしめたいのが律なのだとしたら、抱きしめられて嬉しいのは自分だ。素直に自分から抱きしめることも、それが嬉しいことも伝えられないでいるだけで。だから、たとえば抱きしめるときに起こされてしまったとしても、幸せな微睡みと目覚めなのだ。起きなかったとしても、朝目覚めるときにはきっと律の腕の中にいる。そう思えることが『寂しさ』すら生まないでくれている。

「…強いなぁ、律は。」

 誰もいない部屋で、ぽつりと呟く。まだまだ、律みたいにはなれない。律にも不安が滲んで見えたのはほんの数回で、自分の素直になれなさと比較したら大したことがない。頑張って追い付きたいのに、すぐに心を覆う不安や弱さが足を引っ張る。そんな自分に呆れるでもなくただずっと、優しく抱きしめてくれる人。この人を、ここで待っていたい。

『帰り、気をつけてね。くれぐれも安全運転で。新しい年も、よろしくお願いします。』

 これを読むのは、年が明けてからだろう。打ち終わって送信し、怜花は静かに配信の画面に戻した。