夜を繋いで君と行く

* * *

「行きたくないぃ~…。」
「…あと30分で出るって言ってたよ。」
「…行きたくなーい…。」

 ソファに座る怜花の膝を枕にして唸る律を、やれやれといった顔で怜花は見つめた。そんな時、ふとソファ前のローテーブルに置かれた律のスマートフォンが震えた。長く震える様子から察するに着信のようだ。

「…三澄?」

 だるそうに体を起こして画面をタップすると、ふわぁと欠伸をしてから電話に出る。怜花はそれを一度目で確認すると、律が膝の上からいなくなった今がチャンスとばかりに立ち上がった。律の軽食を準備するためだった。

「うん。あ、はい。もしもし?」

 少し律が遠くにいったため、仕事の電話なのだろうと思い、怜花は怜花で自分のすべきことに集中する。今日は12月31日。律は年越しの事務所の配信番組に出演するために出かけなくてはならない。そのため、早めの夕飯として年越しそばを一緒に食べ、おそらく夜にまたお腹が空くだろうということで軽食を作っている。おにぎりを二つと、スープジャーには豚汁。どちらも律のリクエストだ。余った豚汁は怜花が今日の夜に食べてしまう予定で、明日はお雑煮を作る気で材料は買い揃えてある。
 足音が近付いてくる。電話が終わったらしい律が、まっすぐキッチンに戻ってきた。

「…怜花、大事なこと隠してたでしょ。」
「大事なこと…?というか、三澄さんだったんじゃないの、電話。」
「三澄のスマホからの連絡だったけど、電話の主は椎名さん。」
「え、里依?」

 律は強く頷いた。ということは里依が何かを律に話したから、怜花が何かを隠したことがバレたということなのだろう。律にまだ話していないことは色々とあるが、今日という日にわざわざ里依が電話をかけてまで話したいことが全く見当もつかなくて、怜花は首を傾げてしまう。

「怜花、誕生日、いつ?」
「誕生日…は、えっと、1月2日かな。」
「それ!なんで言ってくれなかったの!」
「なんでって…誕生日が2日だから祝ってって言えってこと?」
「そう!俺が一番祝うでしょ!一番に祝っていい権利得てないの?俺!」
「…待って、何?里依は何て言ってたの?」

 一度状況を整理したくて、怜花はふぅっと一度深く息を吐いた。

「三澄が年始休みで一緒に居る時間が取れるんなら、自分の誕生日は後回しでいいから二人の時間をちゃんと過ごしなって言ったんだって?」
「それは、うん。だってそうでしょう。毎年里依が祝ってくれてたけど、今年は三澄さんより私を優先する理由がないし。」
「…椎名さんはそれを、気にしてたんだって。ちゃんと俺に祝ってもらうことが確約されてますかって、そういう確認の電話。」
「…そういう、こと…。」

 里依の読みは確かに正しい。特に言うつもりもなかった。ただでさえようやく律はその時期ゆっくり休めるようになる。家でゆっくりしてほしかったし、自分のために何かしてほしいなんてことは少しも考えていなかった。