夜を繋いで君と行く

 怜花が腕の中で少し顔を上げるだけで、その動きに気付いた律が「ん?」と、表情を窺ってくれる。このちょっとした動きと声にいつも勇気付けられて、恥ずかしくて顔を見られたくない気持ちよりも少しだけ、顔を上げてみようかなと思う気持ちが勝る。

「…無理と我慢は、してない?」
「してないっちゃしてないし、してるっちゃしてる。でもそれはさ、同じことを怜花に問うよ、俺は。俺に今ここで体全部任せますって怜花が言うのは、とてつもない無理と怖さとか不安とかそういうの全部我慢しないとできないことじゃない?」
「…わかんない。積極的にしたい…ってはならないの、は…その、いい思い出がない、から…で。」
「うん。」
「…でも、今まで律としたことは、…料理とか、一緒にただ寝るだけとか…あんまりしたことないことばっかりだから、全部楽しくてほっとして…。だから、…その先も怖くないのかなとかも、…ちょっと思うし。」
「…待って待って。可愛いこと言いすぎ。ストップ。軽率に道を踏み外しそうになる。」
「…彼氏なんだから、道の踏み外しではなくない?他の子襲ってたらちょっと…うん、それは道を踏み外してると思うけど。」
「そもそも、…いやこれ言ったらうわ、女の敵とか思うかもだけど…考えてみると自分からいったことないんで。」

 怜花がじっと律を睨む。確かに律の顔面はモテるのだ。そんなモテ男の顔が今は困っている。それを見ると怜花の口元はつい緩んで笑みを浮かべてしまう。

「女の子から迫られる側なのね。いいご身分ですこと。」
「そんなの怜花だってそうでしょ絶対。自分から好きです!付き合ってください!って告白したこと、ある?」
「…ない、けど…。」
「でしょ?その点に関しては両成敗を希望します!」
「両成敗って…ケンカしてたんだっけ?」
「してないしてない。でもさ、そういう側だった俺が初めて自分からこの子がいいって思って、ちょっと頑張ったのが怜花なので…だから、最終的には全部貰うけど急いでない。つまり無理はしてない。…まー我慢はしてるよねーだってそーんな可愛いことばっか言うしやるし。クリスマスなのにいちゃいちゃする時間、限定的だし?」
「……律だって、いきなり爆弾落とすじゃん。」
「爆弾?」

 怜花は律の胸に顔をぎゅっと押し付けて、照れた顔を隠した。

(…最終的には全部貰うって、爆弾発言だよ!)