夜を繋いで君と行く

* * *

「おかえり!」
「ただいま。…赤、可愛いね。クリスマスっぽくて。やっと本物見れたー…。」
「お疲れ様。」
「うん。…だめだ、可愛すぎて抱きしめたいんだけど、イベント滅茶苦茶人いたから先にシャワーばって浴びる。5分で出てくるから怜花は絶対着替えないでそれでいてね。その服まだ全然堪能してないから。」
「服…?」

 律は普段見せないスピードで風呂場へと向かい、有言実行であっという間に出てきた。風呂の後は今までならスウェットだったはずなのに、今日は白のタートルネックにネイビーのテーパードパンツという、外にでも出かけるのかという恰好だ。髪だけは濡れているが、短いので服に雫が落ちてくる心配はなさそうだった。
 キッチンでクッキーの準備をしていた怜花のところまで来ると、律は怜花の肩をちょんとつついた。手を止めて振り返ると律が腕を広げている。

「抱きしめていいですかー?」
「…まだ許可制なの?」
「だって今、怜花の手が離せないタイミングかわかんないし。」
「朝はそんなの関係なく抱きしめたくせに!」
「それもそっか。はぁー…やっとだ。」

 律からはシャンプーの香りがした。呼吸の音が耳の近くで聞こえると、帰って来たんだなという気持ちになる。怜花はそっと背に手を回す。

「…なにこれ、ふわふわじゃんこの服。」
「ニットだからね。」
「明るい色も似合う。何着ても可愛いんだけど、赤って着てるの初めて見た。」

 腕が緩まり、律の視線が怜花の頭のてっぺんから足先まで動く。

「…あの、そんなに凝視されるようなこと?」
「スカート…じゃないね、なんて名前なのその服。」
「何て名前なんだろう…名前を気にして買ってないからなぁ…。わかんないけど、履きやすくて動きやすいから気に入ってるの。」

 いわゆる王道の可愛いスカートを1着も持っていなくて、せめてクリスマスらしい服装をと思って持っているものの中から組み合わせた。スカートに見えるけれど、実際はスカートではないこの種の服ばかり持っている気がする。可愛くしたい気持ちと、可愛い自分であってはならないという気持ちの狭間で揺れて、すぐにはいつも動けない。

「…可愛い。本物がやっぱり一番いい。昼は写真で我慢したけど、解禁!」
「…い、言わなくていいの!そ、そう!クッキー!早くやらないとなの、型抜きは。あと律を早く寝かせないと!」
「…子供じゃないんだけど、俺。」
「寝たくないって昨日駄々こねたでしょ?だから昨日より絶対早めにベッドに押し込むから。」
「怜花が一緒に寝よって言ってくれたら一発でベッド行くけど。」
「い、言わないからそんなこと!」
「えー俺を寝かせたい怜花なら言ってくれるかなって期待したのに。」