夜を繋いで君と行く

 1枚目は意外と高さのあるパンケーキをチョイスしたらしく、それを慎重に撮影している怜花だった。服装も今日は珍しく、ワインレッドのニットを着ている。明るい色を着ているところをあまり見たことがなかったため、妙に新鮮に映る。自身が撮影されていることに気付いたのか、照れながらも慌てた顔で『ちょっと!』という声が聞こえてきそうな写真もさらに付け加えられていた。

「…なるほど…今回は大人っぽい里依さん仕上げ…。」

 ちゃんと頭を抱えつつもスマートフォンを凝視する三澄にも笑いが込み上げる。

(ちゃんと三澄、悶絶してるよ。すごいね怜花。作戦通り。)

 誰かのためになら全力を出せる怜花らしいといえばらしいし、その頑張りが親友だけではなく三澄のことも幸せにしているのだからすごい。

「三澄、送るから返して。」
「うん。」

 一度本体に保存して、三澄のLINEに送る。この写真が自分の手元に残っていたら嫌だろうなと思って、本体からは削除する。

「お礼言っておいてね、一橋さんに。」
「うん。やり返してくれてありがとうって椎名さんにも。」
「うん。」

 クッキーにまた手を伸ばし、口に入れながら律は返事を打つべくスマートフォンを握った。

『作戦大成功。三澄がありがとうだって。頭抱えながらスマホ凝視してた。』

 すぐに既読がついた。そしてすぐに返事が返ってくる。

『よかった!タイムテーブル確認したら今くらいは休憩じゃないかなって話してたの。』
『ごめん!休憩の邪魔したね!休んで!』

 ジェットコースターのように急降下して、引っ込んでしまいそうな返信に苦笑する。怜花が邪魔だったことなんて未だかつて一度だってないのに、すぐに自分の存在を『邪魔』だと決めつけてしまう。それが覆るまで、どれだけ律にとって怜花が大事なのかわかってもらう行動をとり続けるしかない。

『邪魔なわけないでしょ。クッキー食べて休憩してる。怜花の写真、可愛かった。あれ、一番元気出た。』
『見ただけだよね?』
『それはどうかな?』
『データ送ってもらったの?』
『三澄も送ってほしそうだったからね。俺らの中で交渉成立した。』
『消して!』
『すぐ待ち受けにしてないんだから我慢してるでしょ。』
『待ち受けとか絶対だめだから!』
『じゃあクッキーにしよっかな。待ち受け。』
『それならいいよ。』
『家帰って、一緒に作ったやつにする。』
『今日やるなら帰ってくる大体の時間わかったら連絡くれれば生地広げておくよ。』
『今日やる。こっち出る前に連絡する。』
『わかった。じゃあ残りも頑張って。』

 ただ、自分が帰るだけ。その連絡を待つ人がいる、連絡をしたい人がいる。本当にただそれだけのことが、馬鹿みたいに嬉しくて温かい。

(…これから帰るよーって連絡していいんだもんなぁ。…やば、これ。)