夜を繋いで君と行く

 怜花の作り出す音に耳を傾けてどのくらい経ったかわからないが、どうやら何かが焼けたらしい。確実に和食の匂いが漂う中、甘い香りもそこには混じっていた。
 オーブンレンジが開いて、閉まった音がした。パキッという音のあと、「うん、美味しくできた。…よかった」という怜花の声が聞こえて、たまらなくなって布団にくるまったままの律は声を出した。

「何が美味しくできたのー?」
「…寝たんじゃなかったの?」
「横になってるだけでも休んでることになるって何かの記事で読んだ。」

 キッチンからひょこっと顔を出した怜花は、ふぅと小さくため息をついてから呆れたように律を見つめた。

「焼き立てほやほや、食べる?」
「食べる!」
「律はソファから動かないこと。あと15分は絶対。」
「…あと15分でご飯できるってこと?」
「そう。…本当は早すぎるくらいだけど。」
「出る時間ぎりぎりまでいちゃつくっていう手もあるんで、早い分にはへーき。」
「…とりあえず、焼き立ては今しか食べれないから食べていいよ。」

 怜花が小皿で持ってきたのは、クッキーだった。よく見ると、クリスマスツリーだったり、ジンジャーマンの形だったり、雪だるまの形だったりする。表面がキラキラしているものとそうではないものがあり、それ以外は特に違いはなさそうだった。

「これ…。」
「クリスマスっぽいことができないって落ち込んでたから、せめてちょっとでもクリスマスっぽさ出そうかなと思って、型抜きクッキーにしたの。これならまぁ、ちょっと持っていっておやつにもできるし休憩のお供にもいいかなって。ケーキだと持ってはいけないでしょ?」
「…このキラキラ、何?」
「グラニュー糖をつけたの。ついてるほうが甘いかも。とはいえ甘すぎる感じにはしてないから、量も食べれると思うよ。」
「…キラキラ、雪っぽくて可愛いね。」
「ね。だからツリーと雪だるまにつけてみた。やっぱりそれっぽくなったね。」
「うん。食べさせて?」
「えっ!?」
「休んでなきゃだめって怜花、言ったじゃん。休みながら食べるには、食べさせてもらうしかなくない?」
「…さ、策士…!」

 一気に顔が赤らんだ怜花に、律は余裕の笑みを浮かべた。

「そうだよ?甘えられるなーってところにはなんだってつけ込むからね。はい、口開けてるから食べさせてくださーい。」
「…諦めないよね、こういうとき。」
「うん。絶対諦めない。」
「…わかった。いいよ、やるよ。」

 怜花は腕をまくった。妙に気合の入った姿に、律はくすっと笑う。怜花はクッキーの端を持ち、ただ「はい」と言って律の口元に近付けた。律が口でクッキーを受け取ったのを感じるとすぐに手を離したため、その手を律はすかさずとった。