夜を繋いで君と行く

* * *

 24日の早朝。怜花はパッと目を覚ました。律は7時半には家を出ると言っていた。朝ご飯もだが、ちょっとした休憩に食べてもらいたいものも焼き上げたくて、怜花はベッドを出ようとした。すると、寝ぼけ眼の割には強い腕に手を引かれた。

「…もーちょっとここにいてよ。まだ出なくていいし。」
「…朝ご飯、ちょっとしっかりしたのを作りたいんだけど。あと、おやつとして持って行けそうなものを焼きたくて。」

 そう説明するものの、律の手が緩まない。昨日の夜も大変だった。食事の後片付けや風呂、そして律に明日持たせたいお菓子の準備など、怜花にはやりたいことがあったが、律は一緒に寝ることにこだわった。言いくるめることが上手くできず、怜花は洗い物は明日の自分に任せることにし、どうしても外せないお菓子の準備と風呂を全速力でこなして、律をベッドに押し込んだ。ベッド内でも話していたがった律ではあったが、そこは『寝なさい』の一点張りでどうにか寝付かせた。ベッドに入って比較的すぐに寝落ちた様子からも、それなりに疲れていることは感じ取れた。だからこそ、朝ご飯ができるまでの時間、ベッドで休んでいてほしかった。

「…怜花と一緒にいることが一番の回復なんだけど。」
「…わ、わかってる。それは、うん。わかった。わかってます。わかってることに免じて、ここで寝てて。お願い。」

 照れてしまう言葉をまっすぐ受け止めて、素直さに免じて律に引き下がってもらう作戦に出ることにした。律の覚醒した顔を見た限りでは、この作戦は成功だったようだ。

「…なに、…認めるんだ。珍し…。」
「み、認めた!認める!はい、寝てて!」

 怜花は律の手を振り切って、寝室を後にした。パタパタという足音が遠ざかっていく中、律は完全に覚めた目を片手で覆った。温もりも香りも、まだベッドの中にある。本人がいなくなってしまったから、せめて残り香と温度だけは抱きしめたくて、怜花が眠っていた場所に手を伸ばした。

「…足音、可愛すぎでしょ。…はー…眠れませんけど。」

 眠れないけれど、目は閉じる。可愛い彼女のお願いだ。お願いなんてほぼされないし、されたとしても自分の身を案じるものなのだから、素直に従う他ない。『可愛い』表情も声も言葉も追加されて、ただ増えていく。与えられたものを受け取って抱きしめるだけではなく、守って長く続けていけるようにしなくてはならない、と少し気が引き締まる。

「…まずできることは、仕事を滞りなくやる。…うん。」

 クリスマスイブに放っておくのに、そんなことは些末事とでも言うかのようにまっすぐに応援されている。その期待と信頼に応えたい。

「…横になってるだけでも休んでることになる…ってどっかで言われてた…はず。」

 怜花が出す生活の音に耳を傾けたくて、律は毛布を持ってリビングに向かった。

(ソファでゴロゴロしてたら、寝てるってことにしてもらえるかな。…それで許してもらいたいんだけど。)