夜を繋いで君と行く

「…私が、悪いね、それは…。」

 怜花は頭を抱えてから、机に突っ伏した。さっきの律よりも深い深いため息が零れてしまう。

「…ごめんね。不誠実すぎる、私…。」

 くぐもった声で謝罪した。許してもらうためというよりは、ただ心の底から出た謝罪だった。

「待って。そのごめんって何のごめん?付き合ってませんよ、彼氏じゃないですっていうごめん?だとしたらいらないんだけど。」
「…違うよ。」

 律が何度も口にした『好き』に見合う気持ちと言葉を今もっているのかは、自信がなかった。これ以上不誠実な態度はとりたくない。だからその言葉は言えない。ただ勇気がない、というだけでそれを言えない。言ったらきっと喜んでくれるのはわかっているのに。
 それでもあの時よりも落ち着きを取り戻した今だったら、律の『彼女になってほしい』という言葉の答えは導ける。

「…律の彼女にしてください。…そういう肩書、名前を私にください。自信をつけるために、…律のことを心配したり、ここにいてもいいって思ったりできるという理由のために。」

 俯きながら言い終えて、怜花はゆっくりと顔を上げた。頬を染めた律が、まっすぐに怜花を見つめて嬉しそうに微笑んでいる。

「…うん。あー…良かった。…でも、彼氏だったらどこまでお願いしていいのかとかも、全然わかんないな。ずっといてほしいけど、怜花の自由を奪いたいとも、怜花のペースを崩してほしいとも思ってはないからね。」
「…わかってるよ。…というか、律はもっと私に色々要求していい気がする。…告白とかもだけど、その…私は決定的な言葉を避ける…というか…自分で言ってて情けないなって思うけど、逃げるから、すぐ…。」
「え、今すぐ答えてって言えってこと?無理無理!」
「無理、なの?」
「無理でしょ。そんなの、相手を壊しちゃう。…踏み込みたいけど、荒らしたいわけじゃない。さっきのも、充分すぎるくらい答えになってるよ。あとさ、俺のこれ食べたいあれ食べたいに付き合ってくれることも、料理教えてくれることもさ、俺のペースとか意思を尊重して怜花がやってくれてんだって、わかってるよ。…怜花の言う決定的な言葉がなくても、怜花の態度とか俺のやってることを受け入れてくれてることで、このくらいは大丈夫なラインなんだなって見えてきた。…前よりも力の抜けた笑顔見せてくれるから、俺も調子に乗って甘えてる。…そしてこれは、間違いなく加速するから、耐えきれないってなる少し前に教えて。加減できるように頑張るから。」