夜を繋いで君と行く

「三澄のこと、可愛いって言ったじゃん。」
「可愛いところもある人なんだなって思ったの。里依の隣に並ぶ人だから、そういうちょっとしたところも気にするのは意外だなって。」
「…三澄みたいに、全然大人じゃないなって思い知ったけどさ、今日。」
「…充分大人だよ。…仕事忙しいのに、私のこと気にして連絡してくれたんでしょう?」

 わずかな沈黙の後、律は小さく『うん』と頷いた。

「気にしてっていうか、…声が聞きたくなって、もう我慢しないで声聞きたいって言っていいかって思ったんだよ。寂しいのも声聞きたいのも、…全部言うことにした。だって、隠しても不安、なくなんないし。」
「不安、ある?不安に…させてる?」
「…怜花のせいじゃなくて、多分これは俺自身の問題だと思う。…わかんないの、あったかい場所をどうやったら維持できるのかとか。」

 少し落ちたトーンの律の声に、怜花は静かに同意した。

「…わからないよね。…わからないってことが、私にもわかる。でも、律が寂しいっていっぱい言ってくれるから、…こうやって落ち着いて声が聞ける。最初の勇気は、いつも律。ずっと忙しいのに、いっぱい頑張らせちゃってごめんね。…あの、さ…律。」
「うん?」

 怜花は空いている方の手をぎゅっと握る。私だって最初に頑張ることはできる。すぐにたくさん、ではないけれど。少しでも律の不安がなくなるなら、頑張れる。

「…もっと律の声を聞いていたいって言ったら…律は困る?」
「え?」
「…わがままなことを、…言おうとしてて、今。」
「わがまま?うん、聞きたい。何?」
「…あとで、もうちょっと眠くなって、布団入ってから…なんだけど。」
「うん。」
「…寝る前に、律の声、ちょっとだけ聴きたいから…私から電話、かけてもいい?」
「……。」
「…律?」

 電話の向こう側の声が聞こえなくなった。ただ、小さく呼吸の音は聞こえるから、電話が切れてしまったわけではなさそうだった。

「り…つ…?」
「…怜花が今、家に居なくてめちゃくちゃ寂しいのに、そんな可愛いこと言うんだ~…って頭抱えてる。」
「…余計に、その、寂しくさせてる?…難しいな…寂しくさせないのって…。」
「…寂しいのは…まぁそう。でも寝る前に俺の声聞きたいって言ってくれたのが…ほんとやばい。電話切るの嫌だったし、…今も嫌だけど、怜花から電話来るってわかってるなら切れるかも。」
「…余計に寂しくなるとか、律の睡眠を妨害するならその…わがまま、言わない…よ?」
「怜花の言ってるわがままって、全然わがままじゃないし、俺だって寝る間際に怜花の声聞きたいに決まってるじゃん。…ほんとは声だけじゃ嫌だけど、金曜日までは耐えます。」
「…ごめん、なんか。」
「いい、全然。むしろ俺の方こそ寂しいとか言いまくってて、重くてごめん。」
「…重くないよ。律はずっと、素直なだけ。だからいつも、言ってることに嘘がなくて、私は安心できる。…一人でも寝れるようにするために、律の声を今日は貸してね。」
「…いくらでも貸すし、あー…もうほんと、金曜は絶対めちゃくちゃぎゅってするし、耳元で囁かないでって言われたけどやるから!」
「…うっ…そ、それはあの、…あんまり本気出さないで。負けちゃうから。」