夜を繋いで君と行く

 律が腕を緩めて、怜花の瞳をまじまじと見つめた。そのまっすぐな視線に耐えきれなくなって、先に逸らしたのは怜花だった。

「…なんで逸らすの。」
「…そんなに凝視されると、…普通に照れる。私は一般人なので。」
「別に俺だって俳優じゃないし、一般人だよ。」
「一般人はステージに立たないです。」
「たまにだよ。普段はブースで一人で仕事してるって。ねぇ、いつまで目逸らしたままなの?」
「…もう寝る。」

 緩まった腕なのをいいことに、怜花はくるりと律に背を向けた。耳も頬も熱いままだ。両耳に触れると思っていたよりも熱くて、思っていた以上に照れていた自分にも恥ずかしさが増す。律はいつもスマートなのに、自分は照れてばかりだ。

「…やだー。背中向けられんのやだー。顔見たいし、まだ今日って全然キスしてなくない?足りなくない?」
「…朝から結構したと思う。」
「怜花ー。」

 背中にぴったりとくっついた律が、怜花の耳元に唇を寄せた。甘えた声が鼓膜を震わせて、また頬の熱が上がる。律が近くにいることは嬉しいのに、まだまだ全然、律みたいにはできない。律の香りに安心しているのに、『もっと』とは言えない。

「怜花。…怒った?」

 急に落ちたトーンにハッとして振り返ると、律の唇が不意に怜花の頬に触れた。

「!?」
「…ほっぺもいいけど、…やっぱり怜花の顔見てしたい。…やりすぎないように注意はするから…ダメ?」

 この甘えた声に勝てる気がしなかった。怜花は向きを変えて、律の肩に自分の顔を押し付けた。今の赤い顔を見られたくなくて、少しほとぼりが冷めるまでこのままでいてほしくて、そんな気持ちを込めて肩を借りたかった。そんな怜花の心を知ってか知らずか、律はゆっくりと怜花の頬に手を添えた。

「ほっぺ、あつ…!…なに、もう。ずっと可愛いじゃん。」
「…律みたいに、スマートでいられないから…待って、ごめん。」
「…俺も全然スマートじゃないよ。ちゃんと照れてるし、顔も赤い。怜花が余裕なくて見えてないだけ。」
「…そう…なの…?」
「顔上げたらわかるよ、ほら。」

 頬に添えられた律の手に導かれるように顔を上げると、少しだけ赤い頬の律と目が合った。目が合ったと思ったら、律の手は怜花の頬をそのまま引き寄せて、唇は重なった。