「ごめんごめん。なんか気が緩んじゃって、思ったことポンポン投げかけちゃったの。普段はあんまり緩まないんだけど、怜花ちゃんが聞き上手だからつい。ちょっと自分に似た感じもして、ペラペラと。そんな警戒しないで〜」

 ジト目のまま、怜花は二階堂を見上げた。

「私、男嫌いって話、しましたよね?」
「えっ!?」

 怜花の言葉に驚いたのは三澄だった。

「うん。聞いてた。」
「いいですか、距離保ってくださいね?私、超警戒モードに入りますから!」
「はいはい、わかりましたよ〜。」
「ちょっと!真剣に聞いてます?」
「聞いてる聞いてる!」

 二人でいた時とは、二階堂の纏う空気が違う。怜花はそれを肌で感じた。一瞬揺らいだような声はどこかにいってしまって、車内でひたすら喋っていた二階堂に戻っている。

「イケメン声優で売ってるのに、二階堂がこんな感じでやられてるの、ちょっと新鮮で楽しいかも。」
「み、三澄さん…二階堂さん、困ってるのに…だ、ダメですよ!」

 里依の真面目すぎるフォローに、怜花がクスッと笑った。そしてからかう気満々で二階堂に近付いていく。

「イケメン声優で売ってるなんて知らなかったなぁ、私。」
「知ってたとしても、それで態度変わるタイプでもなくない?自分だって美人ってカード、持ってるわけだし?」
「まぁそれもそうなんですけどね。イケメン声優だからと言って警戒は怠らない女だってこと、ご承知おきくださいね?」

 怜花が綺麗な顔で微笑みながらそう言った。

「…ねぇ、里依さん。一橋さんってあの二階堂と対等にやりあえるくらい、弁が立つ感じ?」
「怜花、頭の回転が早いっていうか、次から次へと言葉を繰り出せるっていうか…そうですね、はっきりと言うタイプですし、足も速いし、体力もあるしでスーパーマンです。」
「二階堂があんな風にお手上げってなってるの、写真に撮っていいかな?貴重なんだけど。」
「えっ、そんな!大丈夫なんですか?」
「今の二階堂は最弱でしょ!」

 そう言って三澄はスマホのシャッターを切った。