律も怜花を真似て腕まくりをする。
「基本は俺やるから、指示お願いします先生。」
「そうは言ってもそんなにやることはないんだよ。じゃあまずはえっとこの前は…あ、そうそうこれに入れて浸したの。牛乳は200のやつにしたんだね。まず卵とお砂糖。お砂糖は甘いのにしたかったら気持ち多めかな。」
「気持ち多めって何?基本はどれなの?」
「計量スプーンないから…適当で。」
「初心者に適当って言われても適当って何かわかんないんだけど。」
まだ焼くわけでもないのに、意外と細かい律がちょっと面白い。律の手元にある砂糖のケースを持ち、適当に傾けて怜花が砂糖を入れた。
「こんなものかなぁ。はい、じゃあ牛乳は大体半分入れてください。」
「半分!?そんな大雑把?」
「だって計量カップないし。大丈夫だよ、適当で。」
「計量カップと計量スプーンは買います。」
「…几帳面だね。」
「じゃなくて、適当って言われてもやり慣れてないからわかんないんだって。」
「ちゃんと見てるから大丈夫だよ。多かったら別のもの足して調整するし。」
「そういうもの?」
「うん。はい、牛乳入れて。私がそっち混ぜるから、今度は食パンを半分に切る。」
「はーい。」
泡だて器がカチャカチャと音を立てる横で、パンの袋が開く音がする。律が包丁を持つとなんだか危なっかしいが、パン切り包丁で指を切るほど不器用ではないだろうと思って見守る。律は慎重に2枚の食パンを切った。
「足りる?もっと?」
「とりあえずそれで大丈夫かな。足りなかったらどこかのスーパーに行ってもうちょっと食材買い足して何か作るよ。それに、コンビニでサラダも買ってきてたでしょ?」
「うん。あとスープ。クラムチャウダーと豚汁。」
「突然の豚汁。」
「どっちが好きかなって、わからなかったから。」
どっちが好きかわからないものばかりだ。どっちがどころか、何が好きなのかもよくわからない。学生の頃のようにたくさん他愛もない会話をして、相手の好みをたくさん知って、…そんな順番を大人は踏めない。だから、近寄って見つめて、知っていく。
「スープ系は何でも好きだよ。どっちも食べたいから分けるっていうのは律の中でアリ?」
「うん。色々食べよう。…怜花が作ってくれた具沢山の豚汁も、あったかくてすっごい美味しかった。コンビニでもあの後食べたけど、味が全然違ってびっくりしたんだよね。何か特別なもの入れてるの?」
「酒粕をね、実はちょっと入れてたんだよね。あとは多分コンビニのものより具材が多かったから、単純に具材の旨みだよ。」
「…そっか。」
ひたひたと食パンが揺れる。ひっくり返そうとした1枚が滑って、ぴちゃっとフレンチトースト液が跳ねた。
「うわ滑った!」
「汚れても平気だよ。そもそも綺麗すぎるから気になるだけで、キッチンって結構すぐ汚れるものだよ。」
フライパンが温まり、バターが溶けた香ばしい香りが漂う。ジュッとトーストがフライパンに触れる音がした。
「基本は俺やるから、指示お願いします先生。」
「そうは言ってもそんなにやることはないんだよ。じゃあまずはえっとこの前は…あ、そうそうこれに入れて浸したの。牛乳は200のやつにしたんだね。まず卵とお砂糖。お砂糖は甘いのにしたかったら気持ち多めかな。」
「気持ち多めって何?基本はどれなの?」
「計量スプーンないから…適当で。」
「初心者に適当って言われても適当って何かわかんないんだけど。」
まだ焼くわけでもないのに、意外と細かい律がちょっと面白い。律の手元にある砂糖のケースを持ち、適当に傾けて怜花が砂糖を入れた。
「こんなものかなぁ。はい、じゃあ牛乳は大体半分入れてください。」
「半分!?そんな大雑把?」
「だって計量カップないし。大丈夫だよ、適当で。」
「計量カップと計量スプーンは買います。」
「…几帳面だね。」
「じゃなくて、適当って言われてもやり慣れてないからわかんないんだって。」
「ちゃんと見てるから大丈夫だよ。多かったら別のもの足して調整するし。」
「そういうもの?」
「うん。はい、牛乳入れて。私がそっち混ぜるから、今度は食パンを半分に切る。」
「はーい。」
泡だて器がカチャカチャと音を立てる横で、パンの袋が開く音がする。律が包丁を持つとなんだか危なっかしいが、パン切り包丁で指を切るほど不器用ではないだろうと思って見守る。律は慎重に2枚の食パンを切った。
「足りる?もっと?」
「とりあえずそれで大丈夫かな。足りなかったらどこかのスーパーに行ってもうちょっと食材買い足して何か作るよ。それに、コンビニでサラダも買ってきてたでしょ?」
「うん。あとスープ。クラムチャウダーと豚汁。」
「突然の豚汁。」
「どっちが好きかなって、わからなかったから。」
どっちが好きかわからないものばかりだ。どっちがどころか、何が好きなのかもよくわからない。学生の頃のようにたくさん他愛もない会話をして、相手の好みをたくさん知って、…そんな順番を大人は踏めない。だから、近寄って見つめて、知っていく。
「スープ系は何でも好きだよ。どっちも食べたいから分けるっていうのは律の中でアリ?」
「うん。色々食べよう。…怜花が作ってくれた具沢山の豚汁も、あったかくてすっごい美味しかった。コンビニでもあの後食べたけど、味が全然違ってびっくりしたんだよね。何か特別なもの入れてるの?」
「酒粕をね、実はちょっと入れてたんだよね。あとは多分コンビニのものより具材が多かったから、単純に具材の旨みだよ。」
「…そっか。」
ひたひたと食パンが揺れる。ひっくり返そうとした1枚が滑って、ぴちゃっとフレンチトースト液が跳ねた。
「うわ滑った!」
「汚れても平気だよ。そもそも綺麗すぎるから気になるだけで、キッチンって結構すぐ汚れるものだよ。」
フライパンが温まり、バターが溶けた香ばしい香りが漂う。ジュッとトーストがフライパンに触れる音がした。



