夜を繋いで君と行く

* * *

 ものの10分で帰ってきた律は、手際よくエコバックを開けた。少なくとも前まではエコバックを持ち歩くような習慣はなかった人だと思っていたが、エコバックを畳む手つきが慣れていて、怜花はそれに驚く。

「ん?何か珍しいものでもあった?」
「エコバック…あったかなって。」
「ああこれ?なんかのグッズ?ほらここ、俺がやってるキャラのモチーフあるんだけど、衣装のパーツの一部とかのデザインだからキャラ全面って感じじゃなくて、使えそうかなって。」
「確かに、よく言われないとわからないかも。」
「でしょ?エコバックを使って多少は買い物をしようと思うくらいには、俺も少し食は見直さなきゃって思ってたよ。怜花のご飯食べてさ。怜花のご飯を食べた後はやっぱ外のご飯がそんなに美味しくなくて参った参った。」
「…大したものは、いつも作ってないのに。」
「大したものが食べたいわけじゃないんだよ。…そうだな、好きな人と、あったかいものが食べたかった。多分、そういうことなんだと思う。」

 律の言葉がまっすぐに心の中に落ちてきた気がする。好きな人と囲んでいた食事だったから温かくて、優しくて、また一緒に食べたいと思ったのだと、本当に今更ながらわかる。もっと前から律との食事が好きだったのだ。

「…が、頑張るね。フレンチトースト。」
「えっ、何で腕まくりするの?何の気合?」
「美味しいものを食べてもらわなきゃという気合。」
「いや、気合とかいいから!っていうか指示出してよ。怜花は立ってないで座ってて。椅子持ってくるし。無理、無茶、無駄な体力の使用、全部禁止なんで。」
「立ってるくらい平気だよ。ちゃんと仕事だって行ってたし、何も食べてなかったわけじゃないんだから。」
「でも、毎日のように顔見てた人が仕事2日間強制的に休ませるレベルなんだって。」
「…だとしても、今日は律とキッチンに立ちたいんだけど。」

 この一言が、律を黙らせる。ぎりっと、律が悔しそうに唇を噛む。その表情の意味が分からなくて、怜花は首を傾げた。

「…どういう、表情?」
「…それはずるいじゃん、くっそ…可愛い…悔しい…そう言われたらダメって言えないじゃん…の顔。」

 律がそれはそれは深く長いため息をつく。そして困ったように微笑みながら、怜花の頭の上にポンと手を乗せた。

「無理するのだけダメだから。立ち眩みしたなーとか思ったらすぐ座ってね。」
「…だから、過保護だってば。」