好きになっちゃ、いけない。〜イケメン主は家政婦兼最強スパイちゃんを溺愛したい〜

 きっと、私がなんで社長になりたくないのかとかなんとか言ったから、それに答えてくれたんだよねっ……?
 感謝の気持ちと一緒に、じわじわとそれ以上の何かが溢れてくる。
 それが抑えきれずに、私は玄さんに詰め寄った。
「あの! 私、そのっ……」
 いきなり詰め寄られた玄さんは、驚いたように目を瞬く。
 私はその気持ちを言葉にする寸前で、ピタッと止まった。
 どうしよう。これ言って引かれないかな、断られないかなと、不安になってくる。
 そもそも、これはスパイとして、「波原柚希」として、絶対言っちゃいけない言葉だ。
「柚希?」
 玄さんが不思議そうに私を見る。
 ……でも、私、こんな人みたいになりたいって思ったから。今の自分を変えるために、あがきたいって、思っちゃったから。
 そうだ。大丈夫。これは……「波原柚希」じゃなくて、「雨雅柚希」としての感情だ。
 私はぐっと、拳を握りしめ、口を開いた。
「私に……お手伝いさせてください!」
 息を吐きだすと同時に言った言葉は、思った以上に屋上に大きく響いた。