好きになっちゃ、いけない。〜イケメン主は家政婦兼最強スパイちゃんを溺愛したい〜

「わかった」
 玄さんは頷くと、サングラスとマスクを外し私の隣に来てくれた。
 小さい風が、私たちの顔をなでる。今日は清々しいほどの晴天だが、ちょうど雲が太陽を隠し屋上は日陰になっている。
 遠くを眺めていると、ふと昨日の奏さまと玄さんの会話を思い出した。
 玄さんは調べたところ勉強はいつも首席、運動も学年トップレベル。そして人望も厚い。
 それで株式会社sayukiの社長なんかになったら、絶対成功すると思うのに……
「なんで、社長になりたくないのかな……」
 そう考えた瞬間、玄さんが驚いたように私を見る。私はハッとして口をおさえた。
 まずいっ……。今の、声に出しちゃってた?
 玄さんは目を丸くして私を見た。
「柚希……昨日俺たちの話を聞いてたのは、柚希か?」
「う、あ、えっと……」
 誤魔化したいけど……これ、もう誤魔化すの無理なんじゃ!?
 そもそも、玄さんに正面から見つめられると口がうまく回らない……。
「そうなのか?」