「それを知ってるのは今まで僕だけだったもんね〜」
「あっさりとバラしやがったな陽宙」
「あはは、ごめんって〜」
　言葉を交わす三人。その会話にぬくもりを感じて、私は微笑む。
　なんだか職場だと思わないほど、温かい空気感だな……。
　ここならやっていけそうで、安心した。……けど、それと同時にこの人たちを騙すのかと思って、胸がズキっと痛む。
「柚希ちゃん、マフィン食べる〜？」
「あ……えっと」
　陽宙くんに可愛い手のひらサイズのマフィンを差し出されて、私は杏さんを見る。
　せっかくなら食べたいけど……、これから仕事の説明とか建物の案内とかあるんじゃないのかな……？
　すると予想していた通り、杏さんは私の代わりに桜水くんの誘いを断った。
「柚希さんにはこれから奏(かなで)さまたちに会ったり建物などの説明をしなきゃいけないから、喋りたいのは分かるけど明日からにしましょう？」
「はーい！　じゃ柚希ちゃん、またね〜」
「はい……！　また」
　桜水くんと春雷くんと別れて、私は歩き出した杏さんの後に続く。